技術者・研究者インタビュー Vol.1

技術者・研究者インタビュー Vol.1
技術者・研究者インタビュー Vol.1
走りながら考えて新規性をつかめ!

脚注

(*1)SIP=戦略的イノベーション創造プログラム
(*2)STATCOM=STATic synchronous COMpensator 自励式静止形無効電力補償装置
(*3)MMC=Modular Multilevel Converter モジュラーマルチレベル変換器
(*4)SiC=炭化ケイ素(Silicon Carbide)従来の半導体の代表格のSi=シリコンに比べて高い絶縁破壊電界強度・バンドギャップ・耐熱性をもち次世代半導体として期待されるパワーデバイス用材料
(*5)SVC= Static Var Compensator 静止型無効電力補償装置

種々の装置の製品化を目指す

— 現在の研究内容を簡単にご説明願えますか。

椋木:三菱電機と東京工業大学の連携研究室に所属し、パワーデバイスの回路シミュレーション用デバイスモデルの開発を目指し、教授、学生と一丸で研究を進めています。
この研究は、パワーデバイスのスイッチング動作を回路シミュレータにて高精度にシミューションすることを目指しています。現在、私と3名の学生で取り組んでいます。デバイスモデルを開発するために実験評価も自分たちでやっています。安全カバーから始まって、パーツを購入し、実験評価設備を手づくりしました。この研究はパワエレ全体で言えば、主回路基礎技術に関すると言えます。

田重田:トランスレス電力変換装置実用化の研究開発を、東工大と共同研究で進めています。これは内閣府直轄のプロジェクトでSIP(*1)と呼ばれています。具体的にはSTATCOM(*2)の新制御方式及び新回路方式の開発を行っています。
一般に、STATCOMはトランスを介して電力系統に接続します。そこで、MMC(*3)という新回路方式を用いることで、トランスを取り除くことを目指しています。また、SiC(*4)という素材を使うことで高効率化を狙っています。

佐藤:他励式の主回路開発・設計を推進しており、主にサイリスタを用いた大容量の無効電力補償装置の開発・設計を行っています。
無効電力補償装置とはSVC(*5)と呼んでおり、系統電圧の変動を抑制するために、安定した電圧供給を補償するための変換器の回路の設計を進めています。実際の動作を再現する装置を使って試験とシミュレーションしていますが、私の場合はパワエレ全体でいえば、製品化に最も近いポジションにあるといえます。

既存モデルを超える回路モデルを提唱

— 現在の研究の課題としてはどんなことがあるでしょうか。

椋木:デバイスの物理をベースとして、既存のデバイスモデルを超える回路モデルを提唱するのが現在のテーマです。IEEE等の国際学会誌に成果を発表し、上記モデルを広めることで、既存モデルとの差異を出すことを目指しています。パワエレ研究では新規性を産むことに一年目は苦心しました。
実験重視のスタイルに変更し、様々な評価手法を考案し、実験評価技術を向上させたことで、デバイスモデル精度も向上しました。
1年目は実験室の準備から着手。実験机の購入、安全装置の作成を学生と一緒に実施しました。この装置が今の研究室の基盤となっており、2年目の今年は修士学生が二つの電気学会表彰を受賞するなど成果を実感しています。
私は物理出身だからかもしれませんが、ノイズ、変換器、モジュールを経て、今はデバイスまでいろいろとやらせてもらったことが生きていると思います。

田重田:東京工業大学の赤木先生が研究を進めていたMMCの制御技術をベースに、高性能化を図るべく新たな制御方式の考案を進めています。STATCOMの制御検討は、よく正相の無効電力補償について議論されますが、実用化を考えると逆相の無効電力補償の機能も必要となります。逆相補償を含めた制御の応答と、安定性の向上を糸口として現在検討中です。
私はもともと電力系統の運用に興味を持っておりましたが、今ではパワエレの業務に携われたことを良かったと思っています。

佐藤:他励式の主回路開発・設計、主にサイリスタを用いた大容量の無効電力補償装置の開発・設計を行っています。たくさん悩み、大変と感じたことも多かったですが、その中でも新しいことを学ぶ楽しさ、成功したときの達成感を味わうことができました。
研究テーマであるSVCという装置の製品化を実現して、世界の市場で勝っていきたいと思っています。

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