用語解説 第42回テーマ: 最適潮流計算(OPF)

2020/08/27

竹原 有紗 〔(一財)電力中央研究所〕

1. はじめに

電力系統の運用には,各母線の電圧値や各発電機の出力を適正な範囲内におさめなければならないなど多数の運用上の制約が存在するが,このような制約を全て満足させ,最も経済的に運用することが理想的である。最適潮流計算(OPF:Optimal Power Flow)とは,この実現を目指した最適化手法であり,種々の制約条件を満足させながら,燃料費最小化のような,ある目的を最適化する運用状態(潮流断面)を決定するものである。

2. OPF の定式化

OPF は以下のような形で定式化される。

Minimize f (x)
Subject to h(x) = 0
g(x) ≤ 0

ここで,x:変数,f (x):目的関数,h(x):等式制約,g(x) :不等式制約である。

目的関数は,燃料費最小化や送電損失最小化など,対象とする問題に合わせて設定され,変数には各母線の電圧値や変圧器タップ比,調相設備の投入量などが用いられるのが一般的である。等式制約としては,需給バランスを考慮するために潮流方程式が考慮される。不等式制約には,各変数の上下限や発電機出力の上下限,潮流制約など,運用上の制約条件が設定される。

解法としては,内点法や逐次二次計画法,逐次線形計画法,縮約勾配法などが代表的である。

3. OPF の開発

OPF は目的関数の設定により,様々な問題に適用することができ,経済負荷配分,電圧制御,送電可能容量の算出,調相設備計画など,幅広く適用が検討されている。適用に際しては,どのような制約条件を考慮できるかも重要となるため,電圧安定性,過渡安定度といった安定度制約やN−1故障時の潮流制約の考慮方法などについても検討が行われている。また,OPF は大規模な混合整数計画問題となるため,離散変数の扱いや実行可能性の向上,高速化など,解法面での工夫も研究の対象となっている。

OPF の研究は1960 年代に始まり,近年は東北電力の中給など実システムでの利用も進んでいる。今後も実用化に向けた研究が継続されていくことで,将来的には一般的な解析ツールとなることが期待される。

【電気学会論文誌B,134巻,9号,2014に掲載】