用語解説 第77回テーマ: 真空遮断器

2020/09/29

守口 聡一 〔中部電力(株)〕

1. はじめに

遮断器は回路状態の通電,投入,遮断が可能な装置である。遮断器内部は消弧媒体で満たされているが,消弧媒体に高真空を用いた遮断器を真空遮断器という。小形軽量で所要スペースが小さい,保守点検が容易で省力化できるなどの特長から36kV 以下の開閉装置に広く採用されており,近年では72kV 定格以上への適用も拡大している。

2. 真空中の絶縁

図1 のように,ギャップ長を一定に保ちながら圧力を次第に下げていくと,ギャップ間の絶縁耐力は徐々に低下していき,やがて極小値に達する(パッシェンの法則)。その圧力値から下げていくと,ギャップ間の絶縁耐力は逆に上昇し,大気中の絶縁耐力を上回ってほぼ一定の値に達する。真空遮断器ではこの領域の圧力を利用している。


図1 気圧と絶縁耐力(1)

3. 真空中の消弧

電流通電時に真空中で電極を開極すると,ジュール損により電極材料が爆発的に蒸発し金属蒸気が電極間に放出,電離してアークを形成する。電極(陰極点)からは金属蒸気や電子が供給され,アークが持続する。電流が零点に近づくと,金属蒸気の供給が減少する。電流が零点を過ぎた時に反対側の電極に新しい陰極点ができなければアークは消滅する。

4. 他の遮断器との比較

消弧媒体による絶縁耐力の比較例を図2 に示す。高真空は他媒体と比較して短いギャップ長で絶縁耐力が高く,ギャップ長を長くしても徐々に飽和することから,低い電圧階級において遮断部の小型化と低操作エネルギー化が可能であることが特長となる。


図2 絶縁耐力の比較(1)(平等電界,交流波高値)

【電気学会論文誌B,137巻,8号,2017に掲載】