用語解説 第79回テーマ: 過渡安定度

2020/09/29

堀内 龍男 〔三菱電機(株)〕

1. はじめに

電力系統には同期発電機(以下,発電機)が接続されていて,同期運転を行っている。発電機の回転子軸と発生磁束軸との相対位置を示す角度を相差角といい,発電機および電力系統が動揺していない場合,相差角は一定である。

系統事故の発生,発電機脱落,負荷脱落等により系統状態が急変すると,発電機の回転子は,加速もしくは減速して相差角が動揺する。この結果,系統状態の急変の大きさ,発電機の特性により,同期運転が継続できなくなる場合があり,発電機が停止に至る場合がある。

過渡安定度とは,系統事故発生後に相差角が動揺しても発電機が同期運転を継続できる度合である。

過渡安定度の向上策としては,事故点の高速遮断,高速度再閉路,制動抵抗による制御,および発電機の速応励磁方式よる制御がある。

2. 動揺方程式

発電機に系統事故による急変(電気的出力の変化)が加わると,相差角が動揺する。この動揺を式で表すと次式になる。

Pm:機械的入力, Pe :電気的出力,M :慣性定数, δm :相差角
相差角の動揺例を図1 に示す。過渡安定度が低い場合は,相差角の動揺が収まらず不安定となる。


図1 相差角動揺曲線

【電気学会論文誌B,137巻,10号,2017に掲載】