部門長のご挨拶
未来社会を支える産業応用部門
Industrial Applications Society supporting the future society
電気学会 産業応用部門 部門長
村上 俊之(慶應義塾大学)
Toshiyuki Murakami (Keio University)
President, Industry Applications Society, IEEJ
日頃より産業応用部門活性化のために格別のご配慮を賜り厚く御礼申し上げます。COVID-19流行の影響で,日々の生活スタイルが大きく変わってきています。ご存じの通り,2020年度の産業応用部門大会については,残念ながらCOVID-19感染拡大の懸念を踏まえ次年度延期の判断となりました。こうした困難な状況においてこそ,ライフスタイルが大きく変わるパラダイムシフトが必要となるのかもしれません。豊かな暮らしを支えるスマート社会の実現の一端に産業応用部門が貢献できれば大変嬉しく思います。
電気学会では1991年に部門制が正式に定着し, 2021年には早くも30年目を迎えます。産業応用部門では,1987年より試行的に部門制を実施した経緯から,2021年には35回目の部門大会を,また試行期間を含めると2022年には部門設立35年目を迎えることになります。部門制の試行から始まり,電子投稿・査読システムの試行については学会全体にも影響した活動であり,また近年では部門英文論文誌の立ち上げや2020年5月には電気学会初のWeb開催研究会が実施され,成功裏に進められました。この研究会では自動車技術会との連携も行われており,他学会との連携を推進する発端ともなりつつあります。電気学会全体の活動へも少なからず影響を及ぼしている産業応用部門では,サステナブルな社会の構築に貢献する電気技術の情報収集・発信の場として,電気機器・パワーエレクトロニクス・制御等の基礎技術から産業・交通運輸・社会システム・家電等の広い応用分野を網羅した活動が,14の技術委員会を中心に行われています。その技術委員会の社会における位置づけを勝手ながら,「資源・エネルギー・食糧」,「経済発展」,「環境保全」の領域でマッピングしてみると,殆どの関連分野は「経済発展」に関連するものに分類されるのではと考えております。従前から,上記の社会三大要素については,個々の最適化をはかって社会全体の最適化を行うことはできないという,「トリレンマ」の問題として議論されていますが,各技術委員会の主要分野で,「資源・エネルギー」や「環境保全」に関わる分野はそれほど多くないと考えております。こうした背景から,これらの領域を扱う他部門や他学会との前向きな連携は重要と考えています。このような活動も意識しつつ,世界におけるグローバル化の先を見据えた環境・エネルギー技術および少子高齢化に耐え得るQOL(Quality of Life)向上による快適なスマート社会の構築に貢献できる学会活動を促したく考えています。産業応用部門を中心とした輝ける未来に向けて,会員各位への情報の場の提供を第一にした運営を目指して参りますので,ご理解とご協力を賜りますよう宜しくお願い申し上げます。
(1) 部門英文論文誌のSCIE登録
論文誌は学会の重要なインフラであり財産です。産業応用部門では,国際的なプレゼンスの向上のため,2012年7月に部門英文論文誌を発刊しました。その後,発展をつづけ,2016年にElsevier社の論文誌データベースScopusに登録されるに至りましたが,さらに国際論文誌として確固たる地位を築くべくSCIE(Science Citation Index Expanded)登録を最重要課題として取り組みます。会員の皆様には,是非,部門英文論文誌への投稿とともに,掲載された論文の積極的な引用をお願いします。
なお,母国語で最新の学術情報の発信と収集・議論ができる和文論文誌も引き続き重要であることは言うまでもなく,一層の充実を図り英文論文誌と共存していきます。
(2) 国際化の継続的な推進
日本の産業界にとって,国際的な事業活動は必要不可欠であり,産業と密接にかかわる産業応用部門の活動も同様です。現在進めている,部門主催の国際会議の充実,アジア地区の学協会との連携強化,また世界規模で影響力を持つIEEEに対し日本の存在感を示す為の戦略立案と実行に引き続き注力いたします。
(3) 多様化の推進
多様化は世界の潮流であり,活力維持のためにも不可欠です。一方で,電気学会の女性会員比率は約2%と,国内でも最も女性が少ない学協会の一つです。一朝一夕に女性会員を増やす手段はないのですが,長期的な視点で,子ども理科教室では,女子児童が進路選択時の将来像の一つとして電気エンジニアを描けるように計画します。また,数少ない女性教員・女性エンジニアの皆様がより一層活躍できるように,ロールモデルの提示や相互交流の場を部門大会で設けます。
(4) 魅力ある部門行事と収益の確保
産業応用部門大会では,2017年の函館大会から,初日にオープニングとプレナリーセッションを設け,中国・韓国の代表者のスピーチを頂く形としました。新しい試みにより魅力ある部門行事で適切な収益をあげ,その収益をさらに魅力的な学会活動とするために投入するという好循環を維持したく考えています。
産業応用部門は会員の皆様で構成・運営され,皆様に活用されることが目的です。各種行事・運営などに関し,ご意見・ご提案をお待ちしています。役員会・関係会議で議論し,期待に応えるよう運営に反映する所存です。