注目論文(産業計測制御技術)

タイトル 自律飛行型ドローンのためのNeural Network を用いた3 次元自由視点認識システムの構築
著者 新垣順也,石川仁史,長山格
巻号 電学論D, Vol. 136, No. 10, pp. 719–726
推薦理由

 本論文では,ニューラルネットワークを用いたドローンから得られる俯瞰視点画像からの自動車種認識システムを提案している。提案手法では,車両検知のために用いられる従来の特徴量に加えて,垂直方向への形状変化をとらえるための新たな特徴量を導入している。検証実験では,3次元CGだけでなく,実車両模型画像,さらにそれにノイズを加えた画像の識別実験を行っており,いずれも従来法より優れた高い精度での識別に成功している。

 ドローン,およびそれから得られる画像認識を機械学習技術を用いて行う手法を提案した本論文は,時宜を得たテーマを扱っており,実験によっても有用性が示されており,注目論文に値すると考えられる。

タイトル Failure Detection Method using Aggregated Vehicle Detector Data
著者 Koichiro Iwaoka, Yuzo Hirotsu
巻号

IEEJ Journal of Industry Applications, Vol.6, No.4, pp.295-302, 2017

推薦理由 交通信号制御や交通予測などを行う交通管制システムにおいて,車両感知器が重要な役割を果たしており,日本国内に多数設置されている。現状では,老朽化した車両感知器も多数あり,また故障も発生するため,メンテナンスを行う必要があるが,コスト面,あるいは故障検出自体の難しさから容易ではない.本論文では,このような問題を解決するため,車両感知器から得られるデータを集約した情報を用いた故障検出手法を提案し,実環境における有効性を確認している。これらの理由から,本論文は産業応用上の診断・監視技術の優れた一例であるため,診断・監視の基盤技術とその応用に関する協同研究委員会から注目論文として推薦する。

タイトル 地中レーダ受信信号のノイズ解析とその除去手法
著者 Francesco Biral, Enrico Bertolazzi, and Paolo Bosetti
巻号 電学論D, Vol.132, No.6, pp.631-641 (2012)
推薦理由 車道や歩道など,舗装された路面の下には,水道管やガス管などの埋設管があり,道路工事においてはこれらを破損しないように注意する必要がある。しかしながら,行政資料に記載された配置と実際の埋設管の配置が異なっている場合が多く報告されている。本論文では,地中レーダによって得られる受信信号をウェーブレット解析し,解析結果からノイズを除去する方法を提案し,有効性を検証している。本論文で提案されている手法は,埋設管位置の標定を精度良く行うための前処理として期待されており,産業応用上の診断・監視技術の優れた一例であるため,診断・監視の基盤技術とその応用に関する協同研究委員会から注目論文として推薦する。

タイトル Notes on Numerical Methods for Solving Optimal Control Problems
著者 Francesco Biral, Enrico Bertolazzi, and Paolo Bosetti
巻号 IEEJ Journal of Industry Applications,Vol. 5, No. 2, pp. 154-166, 2016
推薦理由 現代制御理論の黎明期に理論整備が進んだ最適制御理論は, 近年の計算機性能の向上と設計ツールの整備に伴い, 産業応用分野の多くの制御対象に適用が可能になりつつある。最適制御は特に非線形系に対して大きな威力を発揮するため, 制御入力を実時間で解く手法も開発されるなど, 近年活発に研究が進められている。本論文では, 最適制御問題の数値解法の最新の成果について詳説している。著者のイタリア トレント大学准教授Biral氏は, 第1回SAMCON2015にてチュートリアル講演を務めるなど, この分野の第一線で活躍する若手研究者である。

タイトル Variable Gain Motion Control of Wafer Scanners
著者 Marcel F. Heertjes
巻号 IEEJ Journal of Industry Applications,Vol. 5, No. 2, pp. 90-100, 2016
推薦理由 ICの製造に用いられる半導体露光装置は, 最も高額で最も精密な制御装置と言われている。レチクル(マスク)に描かれた電子回路のパターンを光学系で縮小し, ウエハに焼き付けるウェハスキャナでは, ナノメートルオーダーの位置決め精度が要求される。本論文では可変ゲイン制御によるウェハスキャナの位置決め制御の最新の成果について詳説している。著者のオランダ アイントホーフェン工科大学准教授Heertjes氏は, 半導体露光装置最大手のASMLの主任技術者でもあり, 第1回SAMCON2015にてチュートリアル講演を務めるなど, この分野の第一線で活躍する若手研究者である。

タイトル Use of MEMS Inertial Sensors for Performance Improvement of Low-cost Motion Control Systems
著者 Roberto Oboe, Riccardo Antonello, Davide Pilastro, and Kazuaki Ito
巻号 IEEJ Journal of Industry Applications,Vol. 5, No. 2, pp. 78-89, 2016
推薦理由 近年, 加速度センサやジャイロセンサなど安価なMEMSセンサを用いてモーションコントロールの性能を飛躍的に向上させる技術が活発に研究開発されている。本論文では, MEMS慣性センサを用いたモーションコントロールの最新の成果について詳説している。著者のイタリア パドバ大学准教授Oboe氏は, IEEE Industrial Electronics Society 副会長で, 第1回SAMCON2015にて基調講演を務めるなど, この分野の第一線で活躍する研究者である。