注目論文(モータードライブ技術)
タイトル | 抵抗変動にロバストな最適オブザーバを用いた誘導電動機のベクトル制御法 |
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著者 | 金原 義彦, 道木 慎二, 大熊 繁 |
巻号 | 電学論D Vol. 121 (2001) No. 8 P 902-907 |
推薦理由 |
磁束オブザーバと速度適応則を用いた誘導モータのセンサレス制御系について、抵抗誤差に対してロバストになるような制御ゲイン設計を理論的に導出した。オブザーバを用いたセンサレス制御系の設計に対する理論的なアプローチを提案した。 |
タイトル | 永久磁石同期電動機のV/f制御の高性能化 |
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著者 | 伊東 淳一,豊崎 次郎,大沢 博 |
巻号 | 電学論D,Vol. 122. No. 3, pp. 253-259 |
推薦理由 |
V/f制御は,モータの位置センサを必要としない駆動方式の代表的技術であり,センサレスベクトル制御に比べて制御装置の演算負荷が軽いという大きな特長がある。 本論文以前には,V/f制御といえば主として誘導機用であり,永久磁石同期電動機(PMモータ)への適用はあまり検討されておらず,実用にも至っていなかった。 本論文では,PMモータへのV/f制御の適用において生じる課題とその解決方法が示されている。 まず,PMモータの数学モデルを構築し,その解析を行うことによって,制御系が振動的になるという課題の存在を示すと共に,そのメカニズムを明らかにしている。そして,このメカニズムに基づき,制御系の振動をフィードバック制御によって抑制する手法を提案し,実験によってその効果を確認している。 フィードバック制御によって振動を抑制するというのは,工学的にはオーソドックスな手法である。PMモータのような非線形な制御対象を,巧みな数学モデルによって線形化してこのオーソドックスな手法に持ち込んだ点が,本論文の優れた点であると言える。 本論文に示された技術によって,PMモータのV/f制御が実用化されている。 論文のアプローチとその実用性という点で,本論文から学べることは多く,一読をお勧めする。 |
タイトル | 推定位置軸誤差情報を利用したIPMSMの位置・速度センサレス制御 |
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著者 | 森本 茂雄, 河本 啓助, 武田洋次 |
巻号 | 電学論D,Vol. 122, No. 7, pp. 722-729,2002 |
推薦理由 |
IPMSMの拡張誘起電圧モデルを用いたセンサレス制御の代表的な論文であり,原理から制御アルゴリズムまでをわかりやすく解説し,評価ではパラメータ変動の影響まで検討されており,IPMSMのセンサレス制御を理解する上で非常に有用な論文である。 |
タイトル | 瞬時すべり周波数制御に基づく誘導電動機の新高速トルク制御法 |
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著者 | 高橋 勲, 野口 敏彦 |
巻号 | 電学論B,Vol. 106, No. 1, pp. 9-16, 1986 |
推薦理由 | 誘導電動機のトルクと磁束が追従するような電圧ベクトルを直接選定するという考えのモータ制御であり,ひとつの究極のモータドライブの形態といえる。近年はスイッチングデバイスの高性能化による高周波化等により,本論文の制御手法は必ずしも多く用いられているわけではないが,制御の発想は非常にわかりやすく制御構成もシンプルであり,また過渡応答特性に関する記述もわかりやすいため,幅広いモータドライブ制御手法を学ぶという観点でだけでなく,モータドライブの考え方,歴史を学ぶのに一読の価値がある論文である。 |
タイトル | DCブラシレスモータの位置センサレス制御法 |
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著者 | 角 和紀, 山村 直紀, 常広 譲 |
巻号 | 電学論D,Vol. 111, No. 8, pp. 639-644, 1991 |
推薦理由 | 永久磁石モータの簡易的なセンサレス制御方式を提案した。V/f制御的な電圧生成に同期安定化のための補正項を加え,フィードフォワード的な制御により永久磁石モータの安定なセンサレス駆動を可能にした。 |
タイトル | 適応二次磁束オブザーバを用いた誘導電動機の速度センサレス直接形ベクトル制御 |
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著者 | 久保田 寿夫, 尾崎 正則, 松瀬 貢規, 中野 孝良 |
巻号 | 電学論D,Vol. 111, No. 11, pp. 954-960, 1991 |
推薦理由 | 本論文記載の適応二次磁束オブザーバおよび速度適応機構は,今日では業界標準とも言えるものであり,その技術を理解するのに有用である。また,パラメータ誤差の影響にまで言及しており,実用性も兼ねた優れた論文である。 |
タイトル | PMモータの弱め磁束制御を用いた広範囲可変速運転法 |
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著者 | 森本 茂雄,畠中 啓太,童 毅,武田 洋次,平紗 多賀男 |
巻号 | 電学論D,Vol. 112, No. 3, pp. 292-298, 1992 |
推薦理由 | 高効率化の観点からPMモータが広く使われており,モータの出力範囲を最大限に利用できるようにする弱め磁束制御は必要不可欠である。現在,様々な弱め磁束制御のアルゴリズムが提案されているが,複雑化されているために初心者には理解しづらい。本論文は弱め磁束制御の基礎的なアルゴリズムを提案した論文であるので,弱め磁束制御を学ぶ取り掛かりにしやすく,電流ベクトルの軌跡も描かれているので理解しやすい。また1, 2象限運転の結果が書かれている論文が多い中,4象限運転の結果がきちんと載せられている。以上の理由から,本論文がPMモータの弱め磁束制御を学ぶ初心者・初級者にとって注目すべき論文であると考え,推薦する。 |
タイトル | 可変速ACドライブの漏れ電流・サージ電圧・軸電圧とその抑制法 |
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著者 | 小笠原 悟司 |
巻号 | 電学論D,Vol. 118, No. 9, pp. 975-980, 1998 |
推薦理由 | ノイズ規制やベアリングの電食など,インバータ駆動されるACモータの漏れ電流・サージ電圧・軸電圧は様々な問題を引き起こしており,インバータ設計者・モータ設計者ともに正しく現象を理解する必要がある。本論文は漏れ電流・サージ電圧・軸電圧のメカニズムをわかりやすく説明しているだけではなく,抑制法までも解説しており,基礎を勉強したい方にとって非常に有用性が高く,注目論文に推薦する。 |