活躍する女性エンジニアたち、電気系職場の今を語る(第3回)
座談会参加者
-
東芝インフラシステムズ株式会社
水谷 麻美さん
みずたに まみインフラシステム技術開発センター
技監
博士(工学) -
東日本旅客鉄道株式会社
中島 志穂さん
なかじま しほ東京電気システム開発工事事務所 品川電気システム工事区
電車線科 -
株式会社安川電機
三松 沙織さん
みまつ さおり技術開発本部
つくば研究所 先端技術グループ
司会
-
東海大学
稲森 真美子さん
いなもり まみこ工学部
電気電子工学科
准教授
博士(工学)
腹を割って話せる人が周りにいない人こそ、女性エンジニアの会への参加を
— 稲森:これまでお仕事をしてきた中で、困ったこと、悩んだことなどはありましたか。
水谷:忘れっぽいだけかもしれませんが、あまり覚えていません。楽しさが勝っていたのだと思います。同じことでも、苦しいと思うか、楽しいと思うか、心の持ちようだと思うのです。私たちが、面白いと思う状況も、すごく嫌だと思う人もいると思います。ただし、電気学会などの論文の締め切りに追われた時期などは、ただただ苦しかった記憶しかありません。会社では、上司のOKを取ってからでないと論文を投稿できませんから、それが原因で終電を逃したといったこともありました。
— 稲森:論文の提出に限らず、会社では何かと納期がついて回るので、そうした苦労はあるかもしれません。これは女性だけの苦労というわけではないので、どうしようもないです。そんなとき、みんなで一丸となって取り組み、乗り越えることができれば、楽しさに変わってくるのかもしれません。
三松:研究は楽しいのですが、しんどい部分ももちろんあります。目標が決まって遮二無二取り組んでいる時はいいのです。ですが、どこに目標を置くべきか、そもそもこのテーマに取り組むべきなのかといったところで自問自答する時期は、自分の中でしんどいフェーズです。できるだけ、色々な人と話しながら、自分の意思を固めていくように、心がけています。
中島:企業に勤めていると、大なり小なりあることだとは思うのですが、自分の気が進まない仕事を担当したことがあります。私がやるべき仕事なのか悩み、精神的に追い込まれました。その時はその仕事が終わった後すぐに転勤になったので、解放されました。どこの会社でもそうだと思いますが、いやなこともやらなければならない場合があります。明るく乗り越えられなければ、うまくかわす技術を身に着けることも必要かもしれません。
三松:そういった技術を身に着けるコツがあれば、ぜひ、知りたいです。
— 稲森:同僚にも上司にも打ち明けられない女性固有の悩みもあると思うのです。そんな悩みを吐き出して、救いや解決策のキッカケを見つける場として、電気学会では女性エンジニアの会を設けています。みなさんは、女性エンジニアの会に、これまで何回か参加されています。感想などをお聞かせ下さい。
三松:学会は、みなさん自分に関係する分野の発表や講演を聴講するので、自然と同じような研究や技術に関わる人同士で、つながりを深めていくことになります。一方で、女性エンジニアの会に関しては、電気工学というくくりはあれども、年齢も、立場も、専門も異なる人たちが集まる不思議な場だと感じています。普段ならば話す機会がないような方たちと、ワイワイ話せる貴重な場です。他の会社の人たちの見方や考え方、忌憚のない意見を聞ける機会はそうはありません。
— 稲森:仕事のことだけでなく、プライベートのことなども含めて、夜の懇親会などもとても盛り上がります。妙な居心地のよさを感じます。
三松:女性エンジニアの会に集まっている人たちは、別に女子で集まるのがとても好きな人たちではないと思うのです。そもそも、そこが好きならば、女性が少ない電気系技術を扱うメーカに技術者として入る人は少ないでしょう。しかし、女性エンジニアの会に集まる人たちは、逆にそういった面が共通しているからか、不思議と親近感があり、普段ならば言えないようなことを口に出せる面があるのかもしれません。
中島:確かに、女子で集まるのが得意ではない人が集まっていることは感じます。職場では、後輩に自分の経験をなるべく多く話すように心がけているのですが、女性の先輩がいない職場もあることでしょう。そんな時、女性エンジニアの会に参加して聞ける話は、とても参考になると思います。また、普段の生活でかかわりがないので、気楽さがあるのもいいです。何かを聞いたとしても、別に参考にする義理も必要もありませんし。
— 稲森:お互いに利害関係がない間柄であるのは大きいです。素直に話せます。
水谷:いろいろな人の話が聞けて、本当に面白いなと思います。バックグラウンドが違う人が集まって、楽しく話せているのは確かに不思議です。以前、稲森先生が、男子学生と二人だけで話すと本当に気を使うという話を聞いて、私もマネージャとして男性の部下とワンオンワンの面談をしたことがあるのですが、気を使ったことがなかったなと反省しました。
— 稲森:そうなのです。同じ内容のことでも、男性がいうのと女性が言うのでは、男性の学生の受け取り方が違うようなのです。そういった点では気を使います。私は、自分の指導教官が話してくれたことをそのまま学生に伝えているのですが、私が言うと思ったような反応にはなりません。実際、それで何回か失敗しています。男性が多い中で指導していくのは、少し気を使った方がよいと思いました。こうした自分だけでは気付けなかった男性社会で生きていく術のようなものが、女性エンジニアの会に参加すると分かってきます。