活躍する女性エンジニアたち、電気系職場の今を語る(第1回)-3ページ目
電気系の仕事の幅は広い、女性の適性が高い仕事もたくさんある
— 稲森:電気系職場に女性が少ないのは、仕事自体が女性には合わないからではないかと思っている人もいるかもしれません。実際には、どうなのでしょうか。
三松:理系の研究所や職場で実験をする仕事に就く場合、作業自体に何らかのリスクが伴うことはありますが、特に電気系だけ特別に敬遠されるリスクはないと思います。私は、大学時代には生物系を研究してきて、会社に入ってからは電気系の研究をしていたのですが、それぞれ実験時に注意すべきリスクがありました。生物系の研究では、割れたら危険なガラス製の実験器具や、体に有害な物質、遺伝子操作をした生物などの扱いに気を使う必要がありました。会社に入ってから電気系の実験をする際には、高圧電気機器やモータなど物理的に危険なモノを扱い、これまでとは別の気の使い方をする必要が出てきました。一度、実験で回路をショートさせたことがあるのですが、パンという大きな音がしてパーテーション越しにもかかわらず震え上がったことがあります。
ただし近年特に、世間的な風潮も相まって、会社の安全衛生意識はますます高まり、職場環境の整備も一層進んでいます。特に労災を予防する措置は徹底されており、実験室など職場がどんどんきれいになっています。労災の典型例として、重いモノなどを扱うことによる腰痛がよく挙がりますが、これまで男性基準に従って管理してきた重さのモノも、女性の増加や腰痛防止の観点から、随分減ってきているように思います。こうしたユニバーサルデザイン的な思考が受け入れられやすくなっており、そういった意味では女性が働きやすい職場は増えているように思えます。
— 稲森:女性の意見を受け入れてもらえる素地ができてきているのです。
中島:私が今やっている鉄道設備の工事監督の仕事は、終電から始発までの間に行う仕事が中心です。女子にとってというより、男性でもきつい仕事だと思います。同じ部署にもう一人女性がいます。配属当初は週2回くらい泊りでそうした仕事をこなすという慣習があったのですが、体がきついということで、「週1回くらいにしてほしい」という依頼を出し、なるべく要望に沿うようにしています。ただし、これは女性だからというわけではなくて、今は男性にも同様の要望を出す人が多くなっています。
また、線路内の工事だけがJRの電気系の仕事なわけではありません。駅の中の照明や行先表示ディスプレイを設備するのも電気部門の仕事です。女性でも抵抗のない、きれいで、魅力的な仕事が他にもたくさんあります。電気工学の知識を持っていると、応用先は本当に広いと思います。
稲森:男女を問わず、職場にはいろいろな仕事があり、様々な人がいます。こうした多様性があるからこそ、仕事が楽しくなるように思えます。女性は必ずしも男性と同じ仕事をこなす必要はないわけで、女性しかできない仕事もあることでしょう。自分が活躍できる居場所を見つけて、それぞれの楽しみを探せばよいのだと思います。確かに、周りに合わせなければならない点もあるかもしれませんが、少なくとも今は、いろいろな意見を取り入れてもらえる環境が整ってきているので、要望があれば遠慮せずに出していけば不安は解消するのではないでしょうか。
次回(第2回)は、電気系職場だからこそ感じられる仕事のやりがい・女性エンジニアのキャリアアップ
— 稲森:3回シリーズでお届けする、女性エンジニアが電気系の仕事と職場について語り合う座談会。第1回の今回は、電気系女性エンジニアを取り巻く職場環境の現在、電気系職場の中での女性が活躍できる仕事などについて議論した内容を紹介しました。一昔前までは働く女性が少なかった電気系職場ですが、今では、多くの活躍の場が拓かれ、受け入れる環境も随分整備されてきたようです。続く第2回は、電気系職場だからこそ感じられる仕事のやりがい、さらには女性エンジニアがキャリアアップなどについて議論します。どうぞご期待ください。
本インタビューはコロナ禍に実施のためWeb会議で行ないました