用語解説 第38回テーマ: フォルトライドスルー

2020/08/26

福井 千尋 〔(株)日立製作所〕

1. はじめに

系統事故時に短時間に電圧レベルが急激に低下したり,周波数が変動する擾乱が発生したりする場合がある。そのような擾乱時にも電源が停止せず運転継続できることをフォルトライドスルー (Fault Ride Through,以下FRT)と呼ぶ。

2. フォルトライドスルーについて

FRT が重要視されるのは,PCS (Power Conditioner System) によって系統に連系されるタイプが多い再生可能エネルギーである。従来型PCS はインバータの過電流や直流過電圧保護のため,図1 に示すように系統電圧が低下すると一旦停止し,一定時間後再起動する特性を持たされていた。また,急激な系統周波数変動時にも同様な動作をす
る特性を有しているPCS も多かった。しかしながら,再生可能エネルギーの比率が増大するにつれ,系統擾乱時に一斉に電源脱落して系統内の需給バランスが崩れ,系統安定度が低下する可能性が増えてきた。そのため,最近ではPCSにFRT 機能を備えることが重要となっており,PCS 制御系において事故時の電流・電圧の制御の高度化が進んでいる。


図1 PCSのフォルトライドスルー特性例

海外のGrid Code(系統連系要件)では,図2 に示すようなFRT 要件を規定する例がある。国内でもNEDO による太陽光発電システムへのFRT 性能の規定例がある。


図2 Grid Codeでのフォルトライドスルー要件例
(瞬時電圧低下時の運転継続特性要件の例)

【電気学会論文誌B,134巻,5号,2014に掲載】