平成23年 電力・エネルギー部門「研究・技術功労賞」受賞者

電力・エネルギー部門(B部門)では,長年,地道な活動を続けてこられ,技術の発展に貢献された研究者または技術者の方々の労に報いるとともに,電力・エネルギー分野技術の更なる発展を図ることを目的とし,平成18年から,部門表彰制度として「研究・技術功労賞」を新たに設けております。
研究調査運営委員会および部門役員会での審査の結果,平成23年度の受賞者は,次の4名の方々に決定いたしました。表彰式は,福井大学で開催されました平成23年電力・エネルギー部門大会の表彰式(8月31日)で執り行われました。

件名 受賞者(所属) 受賞理由
「下向き主放電の大地反射により発生する大電流雷放電現象を発見 雷サージ解析技術への貢献」

板本 直樹 殿
(北陸電力(株))

板本 直樹 殿 (北陸電力(株))
十数年にわたり継続的に冬季雷の研究に取り組んできた。その主な研究成果は,試験送電線での雷観測による雷特性の解明,FDTD法の解析精度の検証、大電流を伴う上向き雷現象の発見(東京大学との共同研究)である。石川県の奥獅子吼試験送電線で雷サージ現象の観測を行い,FDTD法を用いた解析により,その解析精度を検証した。また,落雷時に発生する電磁界パルスと送電線故障実績を照合することで,冬季の超高圧送電線故障が200kA級の大電流を伴う上向き雷放電が原因で発生することを明らかにした。この大電流雷は,放電路上を電流波が下向き伝搬し大地で反射すると仮定することで現象をうまく説明できることを示した。
「大規模電力系統の解析技術発展への貢献」

田中 和幸 殿
((財)電力中央研究所)

田中 和幸 殿 ((財)電力中央研究所)
30年以上の間,電力系統の解析に関する研究を継続的に実施し,特に大規模電力系統における故障計算,電圧安定性解析の効率的な手法を開発し,解析技術の発展に寄与した。これらの手法は,電力中央研究所が開発してきた一連の系統解析プログラム群(CPAT)における大規模ネットワーク解析の基盤的要素となっており,電力会社の実務において,系統運用業務を中心に広く活用されている。また,電力系統縮約手法や瞬時電圧低下分布推定手法の開発など,新しい解析・評価技術の開発にも取り組み,大規模電力系統の解析技術の発展に多大な貢献をした。
「パッファ式ガス遮断器の性能向上技術及び信頼性向上技術に貢献」

筑紫 正範 殿
((株)日本AEパワーシステムズ)

筑紫 正範 殿 ((株)日本AEパワーシステムズ)
40年以上にわたり,ガス絶縁開閉装置の開発に従事してきた。特に現在,遮断器の主流を占めているパッファ式ガス遮断器については,その黎明期である70kV級中容量器が初めて製品化された時期から研究開発に従事し,現在の550kV63kA一点切りGCB,UHV1100kV63kA二点切りGCBに至るまでの各段階での高電圧,大電流化技術開発に貢献してきた。特に注力したのが遮断器の心臓部である遮断部(消弧室)の研究開発である。電力流通系統の重要システムである開閉装置のキーデバイスであるガス遮断器において,その信頼性と小型高性能化が,現在,我が国が世界トップレベルであることに大きく貢献した。
「デジタル保護リレー技術発展への貢献」

千葉 富雄 殿
((株)式会社日立製作所)

千葉 富雄 殿 ((株)式会社日立製作所)
35年以上の長きにわたり,デジタル技術を用いた保護リレー装置の研究・開発に従事し,世界に誇る日本のデジタル保護リレー装置の研究・開発実用化に貢献した。デジタルリレー黎明記の第一世代機から,高度・高精度化をはかった第二世代機の実用化まで従事し,特に,高速サンプリング技術に基く高速デジタル信号処理技術をデジタル保護リレーに導入し,保護リレーの高度化・高精度化に優れた研究開発の業績を残した。