用語解説 第1回テーマ: 力率改善コンデンサ
2020/08/19
田村 清[関西電力(株)]
1. 電力用コンデンサの種類
電力用コンデンサは様々な目的で使用されているが,利用する性質,状態で整理すると,表1のとおり分類できる。このうち,力率改善用コンデンサは,その進相作用を利用し,負荷の力率改善を目的に使用される。
表1 電力用コンデンサの種類
利用する性質 | 利用の状態 |
進相作用を利用 | 負荷に並列に用い,力率改善,電圧調整用等に利用 |
インダクタンスを打ち消す作用を利用 | 送配電線に直列に用い,線路のインダクタンスを打ち消し,安定度等の向上に利用 |
容量性リアクタンスの周波数特性を利用 | フィルタ,雷吸収等に利用 |
リアクタンス性を利用 | コンデンサ分圧装置として,コンデンサ形変成器等に利用 |
2. 力率改善用コンデンサ
(1) 力率改善の効果
負荷と並列に電力用コンデンサを用いて,負荷の総合効率を改善すれば,次のような効果がある。
・ 電力損失の軽減
・ 電圧効果の軽減
・ 設備余力の増加
(2) 所要コンデンサ容量の算定
図1 に示すように,負荷に並列コンデンサを接続した回路で説明する。
図1 コンデンサによる力率改善用の回路図
負荷の有効電力をP (kW),改善前の力率cosθ1,改善後の力率cosθ2とすれば,所要コンデンサの容量Qc は,図2のベクトル図から
図2 コンデンサ容量算定のためのベクトル図
として算定できる。
具体的な例として,出力45000kW(力率70%)の変電所において,コンデンサを設置して,力率を90%に改善するためのコンデンサ容量の計算を行なう。(1)式において,P=45000kW,cosθ1=0.7,cosθ2=0.9 とすれば,tanθ1=1.02,tanθ2=0.48 であるので,Qc≒24000kVA となる。
なお,力率改善に当たっては,負荷力率95%程度を一般的な目安としている。
3. 最近の動向
1980 年代後半からパワーエレクトロニクスを駆使した静止型無効電力補償装置(SVC)が適用されるケースがある。このSVC は,系統の電圧変動対策や安定度の向上対策など高速で連続的な無効電力制御が要求される場合に適用されている。
文献
(1) 道上勉:発電・変電 改訂版,pp.308-311,電気学会(2006-2)