用語解説 第5回テーマ: ヨー制御装置

2020/08/19

能條 仁志[(株)ジェイ・パワーシステムズ]

1. ヨー

ヨー (yaw) とは,物体の鉛直 (Z) 軸に対する回転または回転運動を示し偏揺れと訳され,主に車両,船舶,航空機など輸送分野で扱われる。飛行機で表した例を図1 に示す。


図1 飛行機における各軸の回転運動

2. 風力発電機におけるヨー制御装置

電力・エネルギー分野では,水平軸風車形風力発電機で,発電効率向上のため,風車ロータを常に風向と正対するよう方位制御が行われており,これをヨー制御と呼んでいる。

(1) 尾翼式方位制御

その名の通り尾翼を取り付け方位制御する方式で,小型風力発電機に多く採用されている。例を図2 に示す。


図2 尾翼式方位制御

(2) ダウンウインド式方位制御

図3に示すように風車ロータをタワーの後方 (風下側) に配置したダウンウインド風車形風力発電機で用いられる制御方式で,風車ロータに回転軸を中心とするわずかな円錐形にすることで,空力スラストを利用した方位安定性を得ている (コーニング)。コーニング角のついたロータブレードでは,方位偏差 (ε) により斜めの風が当り,迎え角が減少する。このため,風下側のスラストが減少し風向偏差を取り戻すような回頭モーメントが発生する。この方式は制御電源を必要としないメリットがあるが,風上となるタワーによる風の乱れ,タワー振動等の影響で,風車ロータの振動や効率低下が生じることから課題も多い。


図3 ダウンウインド式方位制御

(3) 強制式方位制御 (アップウインド型)

図4 に示すように風車ロータを風上側に配置したアップウインド風車形風力発電機で用いられる制御方式で,風車ナセルとタワーを結合するベアリングに歯付タイプを用い,アクチュエータやモータなどで強制的な方位制御を行う。制御は,風車ナセルに取り付けた風向風速計と風車ロータの方向との誤差をフィードバックする方式などがある。このアップウインド型は,風車ロータがタワーによる風の乱れの影響を受けないため,理想に近い高効率が実現できかつ振動抑制,騒音低減につながるので,大型風車はほとんどがこの方式となっている。


図4 強制式方位制御(アップウインド型)

文献

(1) 飛行機の百科事典編集委員会:飛行機の百科事典,p.152,丸善

(2) 松宮輝・青木繁光・飯田誠:図解 風力発電のすべて,p.19,p.65,pp.84-86,工業調査会

【電気学会論文誌B,131巻3号,p.347,2011に掲載】