用語解説 第6回テーマ: SF6ガス断路器

2020/08/20

世古口雅宏[(株)日立製作所]

1. 開閉装置の定義と分類

電気回路を開閉するためにつくられた機器を開閉機器といい,これに操作,制御,測定,保護などの装置を組み合わせたものを総称して開閉装置という。変電所などの電力所には母線を介して多くの回線が接続されるが,代表的な例として送電線回線の構成を図1 に示す。


図1 送電線回路における代表的な開閉機器

2. 開閉装置

(1) 断路器

(a) 種類と適用の考え方

断路器は使用場所,操作方法などに応じて選定する。一般に66kV 以上では水平一点切り,水平二点切りが多く使用されている。アルミパイプ母線には,変電所全体の配置設計から垂直一点切りやパンタグラフ形を使用することもある。線路引込口の遮断器や,500kV 変電所の母線連絡用遮断器の前後に設置する断路器には,線路や母線の停止作業時の接地のため接地装置を付属させる。

(b) 仕様の決定

定格電圧,定格短時間電流,定格電流の値並びにその組み合わせの標準はJEC-2310 (2003) (交流断路器)に定められているので,このなかから選定する。従来の操作方式は圧縮空気操作のものがあったが,遮断器と同様にエアレス化が志向され,最近では,電動操作や電動ばね操作が一般的になってきている。断路器は定格電圧のもとで,単に充電された電路を開閉するために用いられるほか,ループ電流や小電流の電流開閉性能を要求される場合がある。JEC-2310 に標準値が記載されている。

(2) SF6 ガス断路器

ガス絶縁開閉装置(GIS)に収納された、断路器をSF6ガス断路器と呼ぶ。

(3) ガス絶縁方式の開閉装置

GIS は,絶縁性能並びに消弧性能の優れたSF6 ガス0.3~0.6MPa を充てんした金属圧力容器に,開閉装置,母線,変成器,避雷器などを収納し,互いに接続して構成したものである。気中絶縁に比較して大幅に機器の縮小化が可能である。これらGIS は,特にスペースの縮小が効果的である地下変電所,屋内変電所並びに地価の高い屋外変電所や,地形が急しゅんで敷地造成が難しい屋外変電所など,66kV以上の変電所に広く適用されている。またGIS の適用により安全面,保安面,環境面などが向上するため,これらの面からも適用が拡大されてきている。

3. 最近の動向

GIS は経済性と信頼性を高い次元で両立することが求められている。近年のGIS は1970 年代に比べて据付面積が40%程度にまで小さくなっており,小形軽量化と共に,低操作力化を指向した研究開発が進められている。断路器(DS)に要求される責務の一つとして,複母線を有する変電所の母線断路器には母線切り換えを行う際に,ループインピーダンスに対応したループ電流を開閉する必要がある。GIS の長期性能を維持するためには遮断性能を高め,アーク時間を短くする必要がある。現行のループ電流遮断用断路器はアーク時間を短くするためにばね操作器を用いて開極速度を1.0m/s 程度に速めているが,機器の小形化や高信頼化を図るためにも操作力や開極速度を増大させずにアーク時間を短縮する方式が望まれている。

文献

(1) 電気工学ハンドブック,第6版,p.743,pp.1288-1289,電気学会(2001-2)

(2) 加藤達朗・六戸敏昭・山根雄一郎・山本直幸:「スパイラル電極を用いた電動操作式SF6ガス断路器の開発」,電学論B,Vol. 129,No. 2,pp.369-375(2009-2)

【電気学会論文誌B,131巻4号,p.401,2011に掲載】