用語解説 第15回テーマ: 電気二重層キャパシタ

2020/08/21

山口 浩史 〔(株)明電舎〕

1. 電気二重層

電気二重層は,2 つの異なる相(例えば固体電極と電解液)が接触する界面近傍において,正もしくは負の電荷や電解質イオンが薄い層として並ぶ現象を指す。

2. 電気二重層キャパシタ

電気二重層キャパシタ(コンデンサ)の主な構成材料は,電極・集電体,電解液,セパレータ,絶縁パッキンである。充電時に,図1 のように電極と逆極性の電解質イオンを電極の表面に物理的に吸着させ(これにより電気二重層を形成),放電時に脱離させることを利用するもので,2 次電池と異なり充電・放電の際に化学反応を伴わないため,電極の劣化がほとんどなく,長期にわたって使用できる。


図1 キャパシタの動作原理(充電時)

(1) 電極・集電体

電極は,静電容量を発生させて電荷を蓄える部材である。電極に用いる材料は主に活性炭であり,キャパシタの静電容量は活性炭表面に形成される電気二重層で発現しており,基本的に活性炭の表面積が増えるほど静電容量が向上する。

集電体は,電極と外部とを電気的に接合する部材である。電極に密着させて導通を確保するので,電解液中で安定であるとともに,充放電によって溶出したり,劣化したりしないことが求められる。

(2) 電解液

電解液は溶媒と電解質から構成されており,水溶液系と非水溶液系がある。水溶液系は溶媒が水であり,電解質は硫酸,水酸化カリウムなどがある。非水溶液系では溶媒はプロピレンカーボネート,アセトニトリルなどがあり,電解質としてアンモニウム系オニウム塩
などがある。

(3) セパレータおよび絶縁パッキン

セパレータは電極同士を電気的に絶縁し,電解液をセパレータ内に保持して電解質イオンが移動できる経路を有する。従って,電解質イオンが通過できる孔があり,電解液に対して安定性があり,酸化還元反応の原因となる不純物を含まず,熱的安定性に優れていることなどが求められる。

絶縁パッキンはセパレータと電極間の隙間を埋め,正極と負極を電気的に絶縁するとともに,電解液の漏れを防止する部材である。キャパシタ内部の電解液にさらされるので,長期にわたってその形状および封止能力が保たれることなどが求められる。

3. セル構造

セパレータを活性炭電極・集電極ではさんだ積層セルをパッキンなどのシール材を介して複数積み重ねたものを外装ケースに収納する。図2 に積層構造例を示す。ケース形状としてコイン型や円筒型,角型などがあり,コイン型はDVD レコーダー等の内蔵時計のバックアップ電源として採用されている。


図2 バイポーラ積層形キャパシタ構造例

文献

(1) 独立行政法人工業所有権情報・研修館:平成16年度特許流通支援チャート「電気二重層コンデンサ」,p.3,p.5,p.8,pp.10-12 (2005)

(2) 安藤・伊藤・堀越・渡邉:「電気二重層キャパシタの材料技術」,明電時報,Vol. 313,No. 2,pp.6-9 (2007)

(3) 堀越・伊藤・渡邉・大場:「キャパシタの技術動向と製品」,明電時報,Vol. 320,No. 3,pp.52-57 (2008)

【電気学会論文誌B,132巻,1号,2012に掲載】