用語解説 第18回テーマ: リニアアレイ太陽光発電システム

2020/08/22

佐藤 正幸 〔(株)東芝〕

1. 太陽光発電システムとは

太陽光発電は,太陽の光エネルギーをシリコンなどの半導体により,直接電気エネルギーに変換する技術であり,主に設置場所の違いから住宅用太陽光発電システムと公共・産業用太陽光発電システムとに区別されている。住宅用太陽光発電システムの概要を図1 に示す。太陽光発電システムは,多くの太陽電池をガラスや樹脂で保護した太陽電池モジュールと発生した直流電力を屋内配線や電力系統に接続できるように交流電力に変換するパワーコンディショナなどで構成されている。


図1 住宅用太陽光発電システムの設置例

2. 太陽電池の種類

図2 に太陽電池モジュールの素子(セル)として使用されている太陽電池の種類を示す。太陽電池は材料によってシリコン半導体と化合物半導体に大きく二分される。いずれも結晶体やインゴットから太陽電池用の厚さ数百ミクロンのセル薄片を切り出すため,シリコン消費量も大きくなる。このため,シリコン消費量の少ない厚さ数ミクロンオーダーのアモルファス,薄膜多結晶太陽電池などの薄膜太陽電池が研究開発されている。


図2 太陽電池の種類

シリコン半導体では,光→電気の変換効率は20 数%程度が限界とされていることから,さらに高い変換効率の実現可能性がある化合物半導体の太陽電池が研究開発されている(1)。さらに現在では色素増感太陽電池や量子ドット型太陽電池の研究開発も積極的に行われている。

3. 集光型太陽光発電システムおよびリニアアレイ太陽光発電システム

集光型太陽光発電システムとは,レンズやミラーを用いて高性能の太陽電池セルに太陽光を集光することにより発電する方式を採用した太陽光発電システムである。

集光レンズまたはミラーによって太陽光を一点に集中させて太陽電池セルに入射させるシステムであるため,太陽電池モジュール全体に必要とする太陽電池セルの数が非常に少ないという利点がある。しかしながら太陽光を一点集中させるため,太陽電池セルの温度が上昇し変換効率が低下する可能性がある。一般的に結晶シリコン系においては−0.45%/℃,アモルファスシリコンにおいては−0.20%/℃程度変換効率が低下すると言われている。

上記の問題を解決するため,直線状に並べられた太陽電池セルに,太陽光を直線状に集光して発電するリニアアレイ太陽光発電システムが開発されている。図3 はリニアアレイ太陽光発電システムの開発例である(2)。このシステムでは,図3(b)に示す太陽電池モジュールを7 本使用し,これらを直列に並べて図3(a)に示すような長さ1200mm のリニアアレイを構成している。さらに図3(a)下部の樋型ミラーを用いて太陽光をリニアアレイに直線状に集光している。このため一点集光の場合よりもセルの温度上昇を抑えることができ,さらに通常の太陽光発電システムに比べて少ない太陽電池セルで高い発電効率を得ることができる。これによりシステム全体のコストパフォーマンスを向上させる効果が期待されている。


図3 リニアアレイ太陽光発電システム(LAPS)の開発例(2)

文献

(1) 太陽光発電技術研究組合:http://www.pvtec.or.jp/knowledge/index.html

(2) 桶真一郎・市川直毅・滝川浩史・榊原建樹・荒木建次:「二軸追尾低集光リニアアレイ太陽光発電システム」,電学論B,Vol.129,No.9,pp.1154-1155 (2009)

【電気学会論文誌B,132巻,4号,2012に掲載】