用語解説 第22回テーマ: モーリレー

2020/08/23

二田 丈之 〔電源開発(株)〕

1. 保護リレーシステムと保護リレーの種類

(1) 保護リレーシステム

保護リレーシステムは,系統事故発生時あるいは系統異常発生時に当該箇所あるいは部分を健全な電力系統から極力速やかに切り離すため,またはその影響の波及を抑制するために必要な制御を実施するために設置される。

具体的には,保護対象の電圧と電流を入力するための設備としての計器用変圧器(VT あるいはCVT)および変流器(CT),入力された電圧,電流によって保護対象の異常を正確に検出する保護リレー本体,保護リレーの指令によって動作する遮断器によって構成される(図1)。


図1 保護リレーシステム

(2) 保護リレーの種類

保護リレーシステムは一般に複数の保護リレーにより構成される。保護リレーは非常に種類が多く,その機能や動作時間特性などにより表1 のように分類できる。

表1 主な保護リレーの種類

2. モーリレー

(1) 距離リレー

距離リレーは,伝送装置を使用せず,自端の電圧・電流入力のみにより事故検出ができることから保護リレー装置としての構成が比較的簡単で信頼度が高い。原理は図2 に示すように,点F で故障が発生したとき,リレー設置点の電圧(V)と電流(I)から故障点までの距離(線路インピーダンスZ)を求めるものである。


図2 距離リレーの原理

(2) モーリレーの特性および適用例

モーリレーは距離リレーの一種である。特性は図3 左側のM のように原
点を通る円で示され,方向識別能力と距離測定能力がある。モーリレーの適用例として,距離リレー方式による送電線保護が挙げられる。図3 では,モーリレーを事故点の方向識別と距離第3 段の検出に用いている。


図3 モーリレーの動作特性と適用例

文献

(1) 電気工学ハンドブック(第6 版),pp.783-799, 電気学会 (2001)

(2) 大浦好文 監修:保護リレーシステム工学,電気学会 (2002)

【電気学会論文誌B,132巻,8号,2012に掲載】