用語解説 第26回テーマ: 東京スカイツリーへの雷撃(超高構造物雷撃)

2020/08/24

齋藤 幹久 (東京大学)

1. はじめに

雷害対策には雷電流のピーク値や電流波形等のパラメータが必要であり,そのためには実際の雷電流の観測が必須である。しかし,雷電流の観測データは現在においても十分な数があるとは言えない。これは,一ヶ所で統計的な解析が出来る量の雷電流の観測データを集めるのが難しいからである。東京タワーでも落雷は年に1~2 回程と少ない。

また,雷放電の性状は緯度によってかなり異なってくるので,緯度が大きく異ならない地点で観測されたデータにもとづいて耐雷設計をするのが望ましい。しかし,現在世界で広く参照されているのはスイス等,かなり緯度の高い地域の山上にある高構造物で観測されたデータである。

2. 超高構造物雷撃

高さが数百m 以上の超高構造物では,平地に建てられても上向きの雷放電が発生するようになり,多くの雷撃を受ける。世界で最も高い(634m)自立式の電波塔である東京スカイツリーには年に10 回以上落雷することが予想された。実際,2012 年には11 回の落雷が確認された。

現在,東京スカイツリーへの落雷は,図1 に示す雷電流観測装置(1),付近に設置した高速度カメラや,電磁界観測装置を用いて観測されている。東京スカイツリーは,雷電流の観測を行っている超高構造物では,2012 年現在最も低緯度にあるため,得られるデータは,日本および低緯度の雷の多発する地域の雷性状の解明にきわめて有用である。観測データが蓄積されて雷現象に関する知見が深まり,より適切な雷害対策の実現に結びつくことが期待される。


図1 東京スカイツリーの497m地点に設置された雷電流観測装置(塩ビ管の中に設置)

文献

(1) T. Miki, et al. : “Lightning current observations at TOKYO SKYTREE”, CIGRE C4 Colloquium, V-5, Hakodate, Japan (2012-10)

【電気学会論文誌B,133巻,4号,2013に掲載】