用語解説 第27回テーマ: SF6代替ガス
2020/08/24
中道 裕之 〔(株)日立製作所〕
1. 背景
SF6(六フッ化硫黄)は,無色・無臭・無毒かつ,絶縁・遮断性能に優れることから,図1 に代表される変電機器に幅広く適用され高電圧・大容量化が図られてきた。
しかしながら,世の中の環境に対する意識の高まりを背景に温室効果ガスの使用量や放出量の削減が求められるようなった。その流れの一環として1997 年のCOP3(気候変動枠組み条約第3 回締約国会議)でSF6 ガスは排出削減の対象ガスに指定され,SF6 代替ガスの検討が本格化した。
図1 代表的な変電機器のガス絶縁開閉装置
2. 有力なSF6 代替ガス候補
以下にSF6 代替ガスに具備していなければならない項目を挙げる。
(1) 耐電圧性能に優れる。
(2) 化学的安定性に優れること。
(3) 有毒性が低いこと。
(4) 地球温暖化係数が小さいこと。
(5) 経済性に優れること。
(6) 液化温度が低いこと。
上記の観点から現在までに,窒素(N2),乾燥空気,二酸化炭素(CO2),ヨウ化トリフルオロメタン(CF3I) などが提案されているものの(1),SF6 ガスより優れたガスは見つかっていない。また,ガス遮断器に適用するためには,高いアーク消弧能力も有する必要があり,混合ガスの使用が提案されている(2)(3)。これらの研究分野は解決しなければならない課題が多く今後の技術革新が期待されている。
文献
(1) 尾高啓文・多喜真之・溝口 均・柳父 悟:「SF6 代替ガスとして用いるCF3I ガスのその適用に関する考察」,電学論B,Vol.126, No.5, pp.545-549 (2006)
(2) 六戸敏昭・八木橋義豊・遠藤奎将・大森荘司:「空気, N2, CO2, N2/O2及びSF6/N2 混合ガスの絶縁基本特性」,電学論B,Vol.125, No.6,pp.619-625 (2005)
(3) 「SF6 の地球環境負荷とSF6 混合・代替ガス絶縁」,電気学会技術報告,No.841 (2001)