用語解説 第29回テーマ: ケーブル故障点標定

2020/08/24

川井 二郎 〔(株)エクシム〕

1. はじめに

電力ケーブルの不測の事故による停電は社会機能に大きな影響を及ぼすため,事故の未然防止を図るとともに事故発生時には,迅速かつ正確な故障点標定と復旧作業が重要になる。

2. 故障点標定

電力ケーブルの絶縁破壊事故は,地絡,短絡および断線事故に大別され,更にこれらの事故は2 種類以上複合したり多相に亘ることもある。また,短絡・地絡事故後の地絡抵抗は0.1MΩ 以下から100MΩ を超える高抵抗にまで広範囲に亘る。このように多種多様な事故形態下で故障点(事故点)を標定するには,その状況に適した手法を選択し,一般には,次の手順で事故点が標定される。

(1) 事故時の保護継電器の動作状態の確認およびケーブル各相の絶縁抵抗等の測定結果に基づいた事故状態の確認
(2) 事故状態に適した手法による事故点の標定
(3) 事故点で生じるアーク放電に伴う音響等あるいは事故ケーブルの目視,切り分けなどによる事故点の確認。

3. 故障点標定方法

標定には,マレーループ法,パルスレーダ法,放電検出形パルスレーダ法等がある。マレーループ法は,ホイートストンブリッジの原理により,故障点までの距離を標定する。簡単な測定で高精度に標定でき,広く採用されている(図1)。


図1 マレーループによる標定

パルスレーダ法は事故ケーブルにパルス電圧を与え,事故点で反射したパルスの伝搬時間から標定する。放電検出形パルスレーダ法は,事故ケーブルへの高電圧印加時に,事故点で発生する放電パルスの伝搬時間を利用して標定する。事故に至らずとも,部分放電が発生した場合にも適用されるが,伝搬時の放電パルスの減衰や変歪が標定誤差になるため,種々の対策手法が開発されている。

【電気学会論文誌B,133巻,7号,2013に掲載】