用語解説 第32回テーマ: 無効電力補償装置 (STATCOM)

2020/08/25

倉知 政英 〔電源開発(株)〕

1. はじめに

サイリスタを用いて無効電力制御を行う静止型無効電力補償装置 (Static Var Compensator: SVC) は受電端電圧の安定化,系統安定度の向上,負荷変動による電圧フリッカの補償などの目的で使用される。その構成としては,サイリスタを用いてリアクトル電流の位相制御やコンデンサの開閉制御を行う方式と自励式変換装置を用いて無効電力の制御を行う方式がある。

自励式変換装置を用いて無効電力を補償する無効電力補償装置は日本では,自励式SVC あるいはSVG (Static Var Generator) , 欧米ではSTATCOM (STATic synchronous COMpensator) と呼ばれている。

2. STATCOM の動作原理と特長

表1 にSTATCOM の原理を示す。従来の電力用コンデンサ・分路リアクトルは全く使用せず,系統の要求に応じて無効電力の出力を自由に変える事ができる。出力電圧Vi の位相を系統電圧Vs に同期させた状態でVi の大きさを制御する事により,無効電力の発生と消費を行うものである。

表1 STATCOMの動作原理

STATCOM は以下の特長を持っている。

(1) 進相から遅相まで高速で連続制御できる。
(2) 多重化で高調波フィルタをなくすことができる。
(3) 系統電圧の急変による無効電力の変動が少ない。
(3) 一種の電圧源のように働くので電圧不安定現象防止にも有利である。

文献

(1) 電気工学ハンドブック(第6 版),pp.856-857, 電気学会 (2001)

(2) 「自励式変換器の電力系統への適用技術」,電気学会技術報告,No.919 (2003)

(3) 「電力系統用自励式SVC の開発」,電学論B,Vol.113, No.2, pp.168-176 (1993)

【電気学会論文誌B,133巻,10号,2013に掲載】