用語解説 第33回テーマ: 落雷位置標定システム (LLS)

2020/08/25

清水 雅仁 〔中部電力(株)〕

1. はじめに

落雷位置標定システム(Lightning Location System:以下LLS)は,1980 年代より電力会社を中心に導入が進み,これまで電力設備の耐雷設計高度化,保守効率化に寄与してきた。現在では,電力会社が保有するシステムのほかに,日本全国を1 つのネットワークで観測・運用するシステム(JLDN)があり,落雷情報の提供サービスが行われている。

2. 標定原理

LLS は帰還雷撃(リターンストローク)に伴い放射される電磁波を複数のアンテナで検出し,その結果を用いて雷撃位置を標定する(図1)。雷撃位置の標定には,電磁波の到来方向から計算する方位交会法(Direction Finding Method)と各アンテナへの電磁波の到達時間差から計算する到達時間差法(Time of Arrival Method)の2 種類の標定アルゴリズムが用いられている。従来は,それぞれの標定アルゴリズムを単独で使用していたが,現在のシステムではこの2 つの標定アルゴリズムを組み合わせることで,高い標定精度を実現している。LLS では,雷撃発生時刻,雷撃位置および雷撃電流波高値を観測することができる。


図1 落雷位置の標定原理

【電気学会論文誌B,133巻,11号,2013に掲載】