用語解説 第34回テーマ: 高温超電導ケーブル

2020/08/25

丸山 修 〔東京電力(株)〕

1. はじめに

超電導は,ある温度以下になると電気抵抗がゼロになる現象であり,液体窒素を冷却媒体として超電導状態が維持可能なビスマス系等の高温超電導体を使用した電力ケーブルを高温超電導ケーブルと呼んでいる。高温超電導ケーブルの特徴は,低損失・コンパクトであり,既存ケーブルと比較して損失は約1/2 以下,エネルギー密度は約5 倍以上になる。従って,今後電力需要の増大が予想される都市部などで既存ケーブルの代替として使用することで,既設の洞道や管路をそのまま使用することができ,建設コストの大幅な削減が見込まれる。

2. 高温超電導ケーブルの構造について

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「高温超電導ケーブル実証プロジェクト」にて,東京電力の旭変電所に連系されている高温超電導ケーブルの構造を図1 に示す。2 重SUS コルゲート管で構成された断熱管の中に三心コアを一括して収納することでコンパクト化を図っている。コアは銅撚り線で構成されたフォーマ(心材)の外側に超電導線材を巻きつけて超電導導体層を構成し,この外側にOF ケーブルで使用される絶縁紙による絶縁層を設け,液体窒素を含浸させることで電気絶縁層を形成している。さらに,この上に超電導シールド層を形成し,通電電流と逆位相のシールド電流を誘導させることにより外部へ磁場が漏れない構造となっている。


図1 高温超電導ケーブル構造図

旭変電所では2012 年10 月末から2013 年末までの約1 年間の系統連系試験により,超電導ケーブルシステムの保守性,運転・制御性,信頼性等の検証試験を実施している。

【電気学会論文誌B,133巻,12号,2013に掲載】