用語解説 第35回テーマ: エネルギーマネジメントシステム(EMS)

2020/08/25

広瀬 公一 〔三菱電機(株)〕

1. はじめに

電力安定供給,および,低炭素社会を実現するための重要な技術の1 つにエネルギーマネジメントシステム(EMS:Energy Management System)がある。EMS の基本的な枠組みは,電力の消費と供給を計測するとともに,各種の目的(コスト最小化,CO2 排出量最小化等)を達成するため,各機器に対する制御を行うことである。

2. エネルギーマネジメントシステムについて

EMS は,長年,電力会社における電力需給運用を行うための技術として開発が行われ,中央給電指令所システムとして実現されている。一般に,電力会社のEMS は,以下の機能から構成される。また,図1 にEMS の機能概要を示す。


図1 EMSの機能概要

(1) 監視機能:需給状況,系統状況の監視を行う。
(2) 予測機能:将来の系統全体の需要を予測する。
(3) 計画機能:供給信頼度を確保した上で,経済性追及を目的とし,予測需要と各種電源(原子力,火力,水力,揚水等)をバランスさせる計画を立案する。
(4) 制御機能:刻々と変化する需要に対応し,経済性追求を目的に需給バランスを維持するための制御(EDC: Economic Dispatch Control),系統全体の周波数維持のための制御(LFC: Load Frequency Control)を行う。

再生可能エネルギーの導入拡大に伴い,再生可能エネルギー(太陽光,風力等)の予測,および,蓄電池を含めた計画・制御を考慮したEMS の研究が進められている。

また,東日本大震災後の節電へ対応するため,需要家側のエネルギーマネジメントのニーズが高まり,工場(FEMS),ビル(BEMS),および,家庭(HEMS)等の各種EMS が開発され,系統側と需要家側が連携した需要応動(デマンドレスポンス)も注目されている。

【電気学会論文誌B,134巻,1号,2014に掲載】