用語解説 第36回テーマ: 周波数応答解析(FRA)

2020/08/26

宮嵜 悟 〔(一財)電力中央研究所〕

1.はじめに

周波数応答解析は,インピーダンスなどの物理量の周波数特性を測定するもので,絶縁材料の誘電特性評価の分野などで用いられている。変圧器においては,異常に伴い内部構造が変化して静電容量分布が変化することに着目し,外部短絡事故時に発生する機械力による巻線変形,経年劣化によるプレスボードの寸法収縮に伴う巻線位置ずれや内
部シールド類脱落などの診断手法として適用されている。

2. 周波数応答解析(FRA)

従来,巻線変形・位置ずれなど異常診断としては,商用周波数での短絡インピーダンス測定が適用されている。これらの変圧器異常では,主にターン間や巻線間,対地間の静電容量が変化するが,これらは商用周波数の測定では変化しないことから,キロHz 帯以上の高周波帯での測定が有利である。変圧器の短絡インピーダンスの周波数特性測定例を図1 に示す。FRA では,変圧器に異常がない状態で測定しておいた過去データと比較した変化の有無から巻線異常の有無を診断する。この時,変圧器異常により主に静電容量が変化するため,診断ではそれによる共振周波数の変化に主に着目する。さらに,共振周波数が変化した周波数帯から異常様相を推定する研究や,共振周波数の変化量から異常程度を推定する研究も行なわれている。


図1 FRAの基本原理(変圧器の周波数特性例)

FRA では,測定する物理量は基本的に任意に選ぶことができる。変圧器異常診断においては50Ω抵抗を介して変圧器巻線に電圧を入力し,入力電圧に対する50Ω抵抗の出力電圧を測定してその比を伝達関数と定義し,測定するのが一般的である。

【電気学会論文誌B,134巻,3号,2014に掲載】