用語解説 第37回テーマ: スマートハウス

2020/08/26

岩船由美子 (東京大学生産技術研究所エネルギー工学連携研究センター)

スマートハウスとは,広義には家電や設備機器を情報化配線等で接続し最適制御を行うことで,生活者のニーズに合わせて様々なサービスを提供するものである。近年我が国において普及が進みつつあるスマートハウスにおいては,「スマートなエネルギー需給」に主眼が置かれており,情報技術を用いて家庭内のエネルギー需給を賢く管理・制御する次世代住宅,という定義が一般的になりつつある。

スマートハウスの構成要素は,創エネルギー設備,蓄エネルギー設備,省エネ家電等と,それらを統括する家庭用エネルギーマネジメントシステム(HEMS)である。住宅における創エネルギー機器としては,太陽光発電システムが主であるが,そのほか燃料電池なども導入が進んでいる。蓄エネルギー設備としては,定置式リチウムイオン電池があるが,まだ価格が高いため,電気自動車の電池の有効活用などの検討も進められている。スマートハウスの核であるHEMS は,現状では見える化システムに収まっている感はあるものの,将来的には,省エネ・快適性向上のための家電等の制御機能や,再エネ余剰電力対策・ピーク対策など全体システムへの貢献を目的とした需要応答機能などへと拡張されることが期待される。特に家電の自動制御に関
しては,家電メーカなどによって2012 年から各種製品が販売され始めており,今後競争が激化するものと考えられる。

しかしエネルギーだけでは,消費者にとって魅力的とは言い難い。スマートハウスは,最終的には本来の意味のとおり,エネルギーのみならず,生活者の多様なニーズに応えられるスマートさを目指していくべきであり,図1 に示すようなQOL 軸を含めて機能を充実させていくことが,普及を本格化させる上で重要であると考えらえる。


図1 スマートハウス(HEMS)に求められる機能

【電気学会論文誌B,134巻,4号,2014に掲載】