用語解説 第40回テーマ: モジュラーマルチレベル変換器(MMC)

2020/08/26

佐野憲一朗 〔(一財)電力中央研究所〕

1. モジュラーマルチレベル変換器の構成と特徴

直流送電用の自励交直変換器には,主に2 レベル変換器が適用されている。従来は高電圧化のために複数の半導体素子を直列接続していたが,素子間で均等な分圧を保つ必要があり,この方法による更なる高電圧化や低損失化には技術的な課題があった。そこで近年は,モジュラーマルチレベル変換器(MMC:Modular Multilevel Converter)の適用が検討されている。図1 にMMC の回路構成を示す。(a)に示すように,セル(またはサブモジュール)と呼ばれる同一の要素回路を複数個接続してアームを構成することから,「モジュラー」と呼ばれる。アーム内の各セルは,互いに異なる位相の電圧パルスを出力し,アーム全体では高調波の少ないマルチレベル波形を合成する。6 つのアームにより(b)に示す構成を採れば,三相インバータとして動作する。この他に,3 つのアームをY 結線やΔ結線とした構成もあり,これらを総称してMMC と呼ぶ場合がある。MMC は,制御によって各セル内のコンデンサ電圧を均等に分圧できるため,セルの積み増しによる高電圧化が可能である。また,半導体素子の動作回数が2 レベル変換器と比べて少なく,変換損失も低減できる。


図1 モジュラーマルチレベル変換器の回路構成

2. 適 用 先

MMC は高電圧化が可能であるため,大容量の電力系統用変換器への適用が進められている。直流送電は米国のTrans Bay Cable プロジェクトで実用化され,洋上風力発電用の海底ケーブル送電への適用も予定されている。また,無効電力補償装置(STATCOM)へも既に適用され,交流系統間を連系するBTB システムへの適用が計画されている。

【電気学会論文誌B,134巻,7号,2014に掲載】