用語解説 第41回テーマ: 非接触給電

2020/08/27

市川 路晴 〔(一財)電力中央研究所〕

1. はじめに

一般的に,機器への電力供給は電力線を接続して行われる。これに対し電力線を介さずに無線(非接触)で電力を供給する方式を非接触給電(またはワイヤレス給電)といい,無接点であることからの安全性と利便性から,電動カミソリ,電動歯ブラシなどの小電力分野では,幅広く適用されている。近年,非接触給電は電気自動車の充電など大電力分野へも適用が広げられている。

2. 非接触給電方式

非接触での給電方式は,図1 に示すように,利用される周波数帯により分類され,非放射域では電磁誘導方式と磁気共鳴方式,放射域ではマイクロ波方式と主に3 方式に分類される。特に大電力分野への適用としては,電磁誘導方式と磁気共鳴方式が採用されている。


図1 非接触給電方式の周波数帯域

電磁誘導方式は,2 つの隣接したコイル間で磁束を媒介とした電磁誘導による給電方式で,実用化が進んでいる方式である。しかしながら,電磁誘導の伝送効率は2 つのコイルの相互インダクタンスに依存するため,非接触での伝送距離があまり長くとれない欠点がある。

磁気共鳴方式は,2006 年にマサチューセッツ工科大学から発表され,電力伝送するアンテナの電磁共鳴による結合を利用した方式である。電磁誘導方式に比較し伝送距離を大幅に拡大することが可能で,これまでに伝送距離が1m で90%の効率を実現したとの報告もある。このように伝送距離を大きくとれることを特徴に,電気自動車の充電システムへの適用を目指した開発が盛んに進められている。

また,電気自動車の非接触給電は,現在,静止状態での給電を対象としたものが主流であるが,今後は移動状態での給電にも適用拡大していくものと予想される。

【電気学会論文誌B,134巻,8号,2014に掲載】