用語解説 第46回テーマ: バイオマスガス発電

2020/08/28

宮内 肇 (熊本大学)

1. バイオマスと発電

バイオマスとは,ある時点で任意の空間内に存在する生物体の量(1)のことであり,エネルギーの観点からは,生物体から生み出されるエネルギー資源のことを意味する。バイオマスも燃やすとCO2 を発生するが,そのCO2 は生物が成長過程で取り込んだ大気中のCO2 に由来するため,大気中のCO2増加には関係しないと考える。よって,地球温暖化防止,循環型社会形成に加え,戦略的産業育成,農山漁村活性化等の観点から,我が国では2002 年に「バイオマス・ニッポン総合戦略」としてバイオマスの利活用推進に関する具体的取組や行動計画が閣議決定され(2),同年,「新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法」の施行令が改正され,新エネルギーにバイオマス発電が追加されている。

バイオマス発電には,バイオマスをボイラーで直接燃焼し発生した蒸気でタービンを回し発電する方式や,バイオマスを加熱または発酵することで得られる可燃性ガスでガスエンジンを回し発電する方式などがある。前者は,効率を上げるためには大型化が必要であるが,大量のバイオマスを安定的に入手できることが条件となる。そこで次節では,後者のバイオマスガス発電の実例を挙げる。

2. バイオマスガス発電の実例

秋田県横手市の「バイオマスガス化トリジェネレーション発電システム」(3)では,間伐材などの木質バイオマスをガス化炉(ロータリーキルン)で熱分解してCO やH2 などの可燃性ガスを取り出し,180kWの電力と熱エネルギー(変換効率60%(電力20%,熱40%))に加え,固形燃料(炭化物)を生産している。

熊本県山鹿市の「山鹿市バイオマスセンター」(4)では,主に牛・豚のふん尿(約70t/日)を固液分離後,固形分は堆肥の製造に回され,液体分は約1 ヶ月の発酵過程によりメタンガスを発生させた後,ガスエンジンによる発電(100kW×2 基)と熱の生産を行っている。

文献

(1) 新村出編:広辞苑 第5 版,岩波書店 (1998)

(2) 農林水産省:バイオマス・ニッポン

(3) NEDO 実用化ドキュメント:CO2 排出量削減と地域活性化に貢献するバイオマスガス化発電システム

(4) 熊本県庁:県内のバイオマス活用事例

【電気学会論文誌B,135巻,1号,2015に掲載】