用語解説 第47回テーマ: SiC パワー半導体デバイス

2020/08/28

宮藤 龍二 〔関西電力(株)〕

1. はじめに

従来,電力の制御から携帯端末の電源制御に至る広範囲なパワーエレクトロニクスの分野に使用されているSi(シリコン)半導体デバイスの性能は物性値限界に近づきつつあり,今後のさらなるエネルギーの高効率化を実現するためにSiC(炭化ケイ素)を使用した新たな半導体デバイスの開発が活気を帯びている。既に一部のメーカーでは家庭用エアコンや鉄道車両用電源装置等に適用しており,今後,益々その適用範囲の拡大が期待されている。

2. SiC パワー半導体デバイスの特徴と今後の動向

図1 にSi とSiC の適用範囲を示す。SiC はSi に比べバンドギャップが大きいため理論上その適用範囲は拡大される。Si に対するSiC の物性値の優位性から想定されるデバイスの特徴を以下に示す。

① 高温動作(3 倍)
② 高電圧(10 倍)
③ 高周波動作(10 倍)
④ 低損失(1/100)


図1 パワー半導体デバイスの適用範囲

これらの特徴を活かしたSiC パワー半導体デバイスは,従来のSi パワー半導体デバイスでは実現できなかった領域に適用できるとともに飛躍的にデバイスの大きさを縮小できる可能性が高く,適用装置の小型化も期待できる。課題であった結晶成長技術も改善されており,その進展とともに適用装置の実用化範囲の拡大に期待したい。

文献

(1) 松波弘之:「SiC パワー半導体への期待と課題」,電気評論,pp.15-19 (2013-10)

【電気学会論文誌B,135巻,2号,2015に掲載】