用語解説 第49回テーマ: 地熱発電

2020/08/28

宮内 肇 (熊本大学)

1. 地熱発電とは

地熱発電とは,地中深くのマグマによって熱せられた熱水を利用して発電するもので,再生可能エネルギー発電の一つである。風力や太陽光発電とは異なり,天候に左右されず,安定した発電出力が得られる点が特徴である。

最も一般的な商業用地熱発電はフラッシュ方式(1)である。地下数千m の熱水が貯まる地熱貯留槽から,生産井で蒸気の混じった熱水を汲み上げ,気水分離器で蒸気と熱水に分離する。熱水はさらにフラッシャーで蒸気を発生させ,気水分離器で分離した蒸気とともにタービンへ導き発電する。一方,フラッシャーを通過した熱水は還元井で地中へ戻す。その他に,地下からの乾燥蒸気で直接タービンを回すドライスチーム方式や,熱水の温度が低い場合などはペンタンや代替フロンなどの低沸点媒体を加熱して蒸気にしてタービンに導き発電するバイナリー方式などがある。

2. 地熱発電の開発と運用の課題

地熱貯留槽に存在する熱水量は,還元井および地下水の流れと地中から供給される熱量とで決まり,安定なエネルギー供給にはこの熱資源の収支均衡が条件となる。そのため地熱発電の開発には,事前に十分な資源探査を行ってエネルギー収支を見積もる必要があり,これが大容量の発電設備が建設し難い理由ともなる。運用開始後も,持続的な利用のためには地熱貯留槽の状態を把握する必要がある。熱水には,一般にSiO2,Ca,S などの不純物が含まれ,これらは熱水や蒸気の通り道に付着する。そのため,地上設備は高圧ジェット水による洗浄などを行い,還元井は,掘削機で不純物を機械的に除去するか,井戸を途中から横堀りして再生させるなど,保守にも手間が必要となる。

3. 小規模地熱発電

このような比較的規模の大きい地熱発電とは別に,入浴利用には温度が高過ぎる温泉資源を活かした小規模な地熱発電の開発も試みられている。例えば,長崎県の小浜温泉では,100℃近い高温の未利用温泉水を利用した72kW のバイナリー発電を行うプロジェクト(2)が行われている。

文献

(1) 九州電力:「地熱発電」,http://www.kyuden.co.jp/effort_renewableenergy_
geothermal.html(リンク切れ)

(2) 「小浜温泉プロジェクト」,http://obamaonsen-pj.jp

【電気学会論文誌B,135巻,4号,2015に掲載】