用語解説 第51回テーマ: 架空送電線

2020/08/31

菊池 均 〔(株)ジェイ・パワーシステムズ〕

1. はじめに

発電所から需要地まで大量の電力を送る送電線の内,地上に鉄塔などの支持物を建て,そこに電線を張ったものを架空送電線と呼ぶ。電線には中心の鋼線(補強材)とそれを取り巻くアルミ線(導電部)を束ねた「鋼心アルミより線(ACSR)」(図1)等が用いられる。架空送電線は,厳しい自然環境に晒されており,外部からの様々な影響に対して長い年月耐えなければならない。近年,古い送電線での電線腐食による障害,着雪による異常振動,または台風通過時などの暴風などで,電力の安定供給に影響をきたすことがあり,それら事象へ対策された電線が開発されている。


図1 鋼心アルミより線
Fig. 1. Aluminum conductor steel reinforced.

2. 環境対策電線

(1) 耐食電線

海岸地域に建設された古い送電線路では,鋼心アルミより線(ACSR)において海塩粒子による内部腐食(鋼心とアルミ間の腐食)が散見されている。この対策として従来鋼心にアルミ覆鋼線(AC 線)を使用した電線や防食グリースを電線内部に充填した防食電線が適用されてきた。近年では,さらなる耐食性向上のため,鋼心のAC 線のアルミ被覆部を耐食アルミ合金へしたものや,特殊な防食グリース(ポリマーグリース)を使用した電線も採用されている。

(2) 難着雪電線

電線への着雪対策として,電線へ間隔を置いてリングを取り付ける方法(難着雪リング)が適用されているが,近年では,電線にスパイラル線を巻いたスパイラル付電線や,高発熱融雪材(強磁性体)を巻いて雪を溶かすものなども採用されている。

(3) 低風圧電線

強風による設備への影響に対しても十分な安全性および信頼性を確保する必要がある。対策として,電線の表面形状に工夫を加え,作用する風圧を低減させた低風圧電線がある。最近では,風圧低減と合わせて,コロナ騒音や風音も抑制した低風圧・低騒音電線なども適用され始めている。

【電気学会論文誌B,135巻,6号,2015に掲載】