用語解説 第54回テーマ: 光ファイバ計測

2020/08/31

藤井 隆 〔(一財)電力中央研究所〕

1. はじめに

光ファイバ計測には,広い意味ではファイバを光の伝送のみに使用するものも含まれるが,本稿では,光ファイバ自体をセンサとして利用するものに関して述べる。ファイバ中を光が伝播する際,光の特性(位相,偏光,強度)が計測対象によって変化する。この変化を計測することにより,様々な物理量を計測することが可能である。光ファイバ計測の特長として,耐電圧性,耐電磁誘導,分布型センサとなる等が挙げられる。以下,応用例を述べる。

2. 温度・ひずみの計測

光ファイバによる温度やひずみの計測には,FBG (Fiber Bragg Grating) を利用する方法と,ファイバ中における光の散乱現象を利用する方法がある。

FBG は,光ファイバコア内に作成した周期的な回折格子であり,特定の波長の光のみを反射する。回折格子の周期やコアの屈折率は温度やひずみにより変化するため,反射される光の波長がシフトする。この波長シフトを計測することにより,温度やひずみの計測が可能である。

光の散乱現象の内,Raman 散乱には振動数が入射光よりも低いストークス光と高いアンチストークス光がある。Raman 散乱光の強度は温度に比例するため,アンチストークス光とストークス光の強度比から温度が求められる。Brillouin 散乱光の波長シフト量は温度やひずみにより変化するため,温度・ひずみセンサとして利用される。

3. 電流・磁界の計測

光ファイバを導体の周りにループ状に配置すると,導体を流れる電流によって,光ファイバの軸方向に磁界が誘起される。この時,ファラデー効果によって生じる光の偏光面の回転を計測することにより,導体を流れる電流の計測が可能である(光CT)。ファラデー効果とは,材料を通過する光の偏光面が,光軸と平行な磁界の大きさに比例して回転する現象である。

文献

(1) 谷田貝豊彦:第二版応用光学光計測入門,丸善 (2005)

(2) 藤井陽一・村山英晶:「光ファイバセンシング総論」, Plant Engineer, pp.52-57 (2009-10)

(3) 電気学会技術報告,No.792 (2000)

【電気学会論文誌B,135巻,9号,2015に掲載】