用語解説 第55回テーマ: フライホイール電力貯蔵

2020/08/31

福井 聡 (新潟大学)

1. 構造・特徴・実用例

フライホイール電力貯蔵装置とは,回転体(フライホイール)と電動発電機・電力変換装置を組合わせて,電力を一時的に回転エネルギーに変換して貯蔵し,電力が必要な時に回転エネルギーを電力に変換して放出する装置である。基本構造を図1 に示す。他の貯蔵方式と比較すると,短時間大出力の充放電を繰り返しても劣化が少ないのが最大の特徴である。電気鉄道の回生失効対策(1)や瞬時に大電力を消費する特殊負荷(核融合用実験炉など)(2)に使用されてきた。また電力系統用としては,沖縄電力の中城湾変電所に設置され,近傍製鉄所のアーク炉の運転/停止に伴う系統周波数変動の安定化に用いられている(3)

2. 最近の研究開発例

最近では,太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギー電源の電力平準化用途が注目されている。このような用途では,カナダのTemporal Power(4)や米国のBeaconPOWER(5)などが商用化しつつある。国内ではNEDO プロジェクト「次世代フライホイール蓄電システム」が行われており,大直径炭素繊維強化樹脂製フライホイールと超電導磁気軸受を組合わせた実証システム(容量100 kWh)を開発し,2015 年中に山梨県の米倉山メガソーラ発電所において系統連系試験を行う計画になっている(6)。また,米国Boeing 社も超電導磁気軸受を用いたシステムを開発している(7)


図1 フライホイール電力貯蔵システム

 

文献

(1) 島津登志成:三菱電機技報,Vol.63, No.8, pp.662-665 (1989)
(2) T. Matsukawa, et al. : IEEE Trans. Energy Conv., Vol.EC-2, pp.262-268(1987)
(3) 塚田龍也:電気評論,Vol.82, No.3, pp.38-42 (1997)
(4) http://temporalpower.com/(リンク切れ)
(5) http://beaconpower.com/
(6) http://www.rtri.or.jp/rd/division/rd79/rd7920/rd79200107.html
(7) M. Strasik, et al. : Supercond. Sci. Technol., Vol.23, 034021 (2010)

【電気学会論文誌B,135巻,10号,2015に掲載】