用語解説 第56回テーマ: 同期・脱調・系統安定度

2020/09/23

齊藤 文彦 〔電源開発(株)〕

1. 同期運転と脱調

電力系統に連系する同期発電機は系統周波数で決まる同期速度で運転し,その出力は図1 において(1)式で表され,出力に応じて一定の相差角を保った同期運転を行っている。


図1 同期発電機と電力系統

例えば系統事故等により発電機の電気的出力が小さくなり機械的入力>電気的出力となると発電機は加速し相差角δが大きくなるが,相差角δの増大で電気的出力が大きくなり加速エネルギーを吸収できる範囲であれば新たなバランス点を中心に動揺した後収束し,同期運転を継続することができる。

しかし,その範囲を超えたり,発電機励磁制御系の負制動現象等により動揺が拡大すると発電機が同期運転を保つことができず同期外れを起こし不安定な運転状態となる。この状態を脱調現象という。脱調は電源の連鎖的な脱落を誘発し大規模停電を引き起こすおそれがある。

2. 系統安定度

電力系統において系統事故などのじょう乱が発生した場合に,発電機が同期運転を保ち安定運転できる度合いを電力系統の安定度という。安定度はじょう乱の大きさ,時間経過,系統構成・潮流状況,発電機のインピーダンスや慣性などの機器定数,発電機自動電圧調整器,調速機などの自動制御装置,そのほか多くの要因によって左右される。

安定化対策には,送電系統の設備増強・構成改善,発電所機器の改善,電圧制御,保護リレーの高速化,直流送電の導入等があり,その効果は問題となる要因に依存する。

文献

(1) 「電力系統の安定化技術」,電気学会技術報告(Ⅱ部),No.238 (1986-12)

【電気学会論文誌B,135巻,11号,2015に掲載】