用語解説 第58回テーマ: がいし風音

2020/09/23

大内 勝広 〔東京電力(株)〕

1. がいし風音発生メカニズム

がいし風音は,がいしの連結により,音響共鳴体が形成され,固有の発生音と流れが連成して共鳴音を発生する。まず,風により最外ヒダで「キャビティトーン」が発生する(図1,図2)。このキャビティトーンの周波数が,がいし連の有する特定の周波数と一致すると,がいし笠間で「共鳴」が起きる。その共鳴音が,がいし個々を「振動」させる。これらキャビティトーン・共鳴・振動の3 要素は相互に干渉し合うことでさらに増幅され,最終的に大きな音を発生する。


図1 キャビティ・トーン


図2 がいし風音提言対策設置状況

2. がいし風音の低減対策

がいし風音は1981 年頃から認識され,当時の研究でがいし個々の振動を抑える「風音防止キャップ」が開発され500kV 架空送電線路に適用された。その後,強風地域を通過する1,000kV 設計架空送電線路の高強度耐塩用がいし連では前述の「風音防止キャップ」に加え,がいしヒダでのキャビティ・トーン発生を防止する「波形シート」が開発され,適用されている(図2)。

文献

(1) 「T86028 懸垂がいし連の風騒音」,電中研報告 (昭和62/1)
(2) 池田宏一,他:電学論B,Vol.123, No.3, pp.374-381 (2003)

【電気学会論文誌B,136巻,1号,2016に掲載】