用語解説 第59回テーマ: 保護協調

2020/09/23

武田 康一 〔富士電機(株)〕

1. はじめに

電力系統で発生した短絡,地絡事故などを速やかに検出し,最小範囲で電源から切り離して事故回路を遮断除去するために保護リレーシステムが必要となる。保護リレーシステムには目的,規模,検出方式によって様々な種類がある。事故を系統から瞬時に切り離す為に,無駄のない動作をするよう互いの動作レベルや動作時間を適正に特性調整することを保護協調と呼ぶ。

2. 保護協調の検討

電力系統の保護には高機能なディジタルリレー(1)が適用されるが,一般家庭レベルで最も身近なものはブレーカーである。短絡事故や漏電事故だけでなく,高負荷機器を多数使用することによる屋内配線の過負荷焼損を防ぐためにブレーカーが設置されている。

保護協調を検討する上では,負荷機器(電動機,変圧器等)の始動電流,突入電流などの負荷特性だけでなく,ケーブルの許容電流,遮断器の遮断容量,保護リレー特性などを考慮した上で,保護協調曲線を作成して保護範囲や動作時間に問題がないかを検討する必要がある。

図1 の事故点1 で事故が発生した場合には,事故電流がMCCB2~1 を通過する。この時,MCCB1 がMCCB2 より先に動作するよう保護協調をとることで停電範囲を最小化する。また事故点2 の場合には事故電流がMCCB2 のみを通過するのでMCCB2 の動作で事故遮断する。この時の保護協調曲線の例を図2 に示す。

文献

(1) 「リレーの新しい機能・性能」,電気協同研究,Vol.65,No.2(2009)

【電気学会論文誌B,136巻,2号,2016に掲載】