用語解説 第60回テーマ: 電力系統の保護

2020/09/23

利根川 繁 〔三菱電機(株)〕

1. はじめに

電力系統で発生した事故を放置すると,過電流による事故設備の損傷を招くばかりでなく,事故が系統全体に波及し,系統の維持が困難になる事態が生じる可能性がある。そのため,電力系統には事故を予防する装置,事故を除去して波及を防止する装置(保護リレー)が設置されている。

2. 事故の要因と対策

系統事故の要因の大半が雷,氷雪,風雨などの自然現象である。氷雪,風雨による事故要因として,ギャロッピング(着雪した送電線が風を受けて振動する現象),スリートジャンプ(着雪の落下によって送電線が跳ね上がる現象),塩害(碍子への塩分付着による絶縁破壊)などが挙げられる。自然現象以外の要因としては,樹木・鳥獣の接触,公衆の故意・過失などがある。

事故を予防する装置として,碍子の洗浄装置,送電線同士の接触を防ぐためのスペーサなどが設置されている場合がある。

3. 保護リレー

保護リレーは,設備事故除去リレー,再閉路装置,事故波及防止リレーに分類される。

設備事故除去リレーは事故が発生した設備を系統から切り離す装置であり,主保護リレーと後備保護リレーが設置されることが一般的である。主保護リレーは保護区間内の事故設備を最速で除去できるリレーであり,重要な設備を保護する場合は装置の多重化により,信頼性が高められている。後備保護リレーは主保護リレーで保護できない場合に備えて設置されており,主保護リレーと異なる保護方式を採用することによって安定性が高められている。

再閉路装置は設備事故除去リレーによって系統から切り離された設備を再接続する装置であり,電力系統の信頼度向上と復旧操作の省力化を目的に導入されている。

事故波及防止リレーは事故による系統のじょう乱を防止するための装置であり,一般的に,系統周波数の異常防止,系統動揺の抑制,異常電圧の抑制などの機能を備えている。

文献

(1) 電気学会編:電気工学ハンドブック
(2) 電気科学技術奨励会編:現代電力技術便覧

【電気学会論文誌B,136巻,3号,2016に掲載】