用語解説 第61回テーマ: 電力システム改革

2020/09/24

宇田川恵佑 〔(株)東芝〕

1. はじめに

東日本大震災を契機に,従来の電力システムでは電力の安定供給を将来確保できなくなることが明らかとなった。震災時の計画停電や電力使用制限令,今も続く電力需給ひっ迫状況を踏まえ,国民生活の基盤である低廉で安定的な電力供給の確保に万全を期すため,2013 年11 月に改正電気事業法が成立し,電力システム改革が本格的に動き始めた。

2. 電力システム改革の3つの目的(1)

① 安定供給を確保する

多様な電源を活用しても安定供給を確保できる仕組みを作る。また,需要家の選択を取り込み,需給調整能力を高めるとともに,広域的に電力融通を行える仕組みを作る。

② 電気料金を最大限抑制する

競争の促進や全国大で安い電源から順に使うメリットオーダーの徹底,需要家の選択による需要抑制を通じた発電投資の適正化により電気料金を最大限抑制する。

③ 需要家の選択肢や事業者の事業機会を拡大する

需要家の様々なニーズに多様な選択肢で応える。また,他業種・他地域からの参入,新技術を用いた発電や需要抑制策等の活用を通じてイノベーションを誘発する。

3. 電力システム改革の3 つの柱(1)

① 広域的運営推進機関の設立(広域系統運用の拡大)

平常時は広域的な運用の調整やインフラ整備を行い,緊急時における需給ひっ迫下では,電源の焚き増しや電力融通を指示する等,全国大で需給調整機能を強化する。

② 電力の小売り全面自由化

一般家庭向けの電力小売業への新規参入を可能にするとともに,全ての需要家が電力供給者を選択できるようにする。

③ 送配電部門の法的分離による中立性の一層の確保

誰でも公平に送配電網を利用できるように,一般電気事業者の送配電部門を別会社として,中立性を高める。

4. 改革プログラム

電力システム改革は2015 年4 月の「広域的運営推進機関設立」から始まり,2016 年4 月「小売り全面自由化」,2020年目処の「送配電部門の法的分離」の3 段階で実施される。

文献

(1) 資源エネルギー庁:「電力システムに関する改革方針」,平成25 年4月を元に作成

【電気学会論文誌B,136巻,4号,2016に掲載】