用語解説 第63回テーマ: 地絡・短絡

2020/09/24

川﨑 憲広 (東京都立産業技術高等専門学校)

1. 地絡と短絡

電気設備には意図していない経路に電流が流れないように絶縁が施されている。しかしながら,様々な要因で絶縁が保たれず,感電や火災などの事故につながる可能性がある。これに関連する事象が地絡と短絡である。

地絡とは,電線と大地が電気的に繋がり(図1),大地へ電流が流れる事象である。地絡状態の電気設備は本来電流が流れない箇所でも充電状態となり,接触すると感電事故につながる危険性が高い。地絡の原因は,樹木や重機,飛来物などによる電線と大地の接触や,電線の被覆の経年劣化による導体部分露出による電線と大地の接触などがあげられる。

一方,短絡とは,電線と電線が接触し(図1),その間のインピーダンスが著しく低くなり,大電流が流れる事象である。そのため,電線の溶断,発電機・変圧器の焼損など,火災事故につながる危険性が高い。短絡の原因は,電線の被覆の経年劣化,異物の接触,遮断機の操作ミスによって発生したアークなどにより電線間が接触することが挙げられる。


図1 地絡と短絡の発生箇所

2. 安全対策

地絡による感電・火災・アーク災害を防止するには,保護接地を行うことが基本であるが,漏電遮断器により電流を遮断する方法もある。配電系統では,地絡継電器が用いられている。また,短絡の場合は,過大な電流を速やかに遮断するため,ヒューズや配線用遮断器,過電流継電器などが用いられる。

文献

(1) 内藤勝次:「だれにもわかる電気安全入門」,オーム社 (1981)
(2) 電気学会:「送電・配電」,オーム社 (1988)

【電気学会論文誌B,136巻,6号,2016に掲載】