用語解説 第64回テーマ: 経済負荷配分(ELD)
2020/09/24
冨田 泰志 〔(株)日立製作所〕
1. はじめに
電力系統の経済負荷配分(ELD: Economic Load Dispatching)は,発電費用の経済性を考慮して,全火力発電の必要発電量に対し,各火力発電機の出力配分を決める機能である。発電機によって燃料費特性が異なるため,配分最適化の余地がある。
また,電力系統では,周波数を安定に維持するため,時々刻々と変動する需要量に発電量を逐次一致させる必要があるが,ELD は十数分周期以上の一日の大きな負荷変動を吸収する役割を分担している。
2. 経済負荷配分計算
火力発電機の燃料費は,一般的に発電出力の2 次~4 次の関数や区分的線形関数などで近似される。横軸に出力をとり縦軸に燃料費をとると,一般に図1 のような特性になる。つまり,高出力ほど,単位出力増大させたときに要する燃
料費が大きくなる。これを増分燃料費と呼ぶ。
図1 発電機燃料費特性
全火力発電機の総発電量を一定にする条件のもとで,総燃料費を最小とする出力配分は,理想条件下ではラグランジュの未定乗数法によって求めることができる。その結果として,各発電機の増分燃料費が一致する出力配分のときであることが示される。これを等増分燃料費法(または等λ法)と呼ぶ。図2 にその概念を示した。さらに,送電損失,各発電機の出力上下限制約,出力変化速度制約,送電線潮流制約などが考慮されることになる。
図2 等λ法の概念
文献
(1) 長谷川淳・斉藤浩海・大山 力・北 裕幸・三谷康範:「電力系統工学」,電気学会大学講座 (2012 第7 刷)
(2) 澤 敏之:「火力発電機の基本的な経済負荷配分方法-過去から将来へ-」,電気技術史研究会,HEE-15-019, pp.37-42 (2015-11)