用語解説 第65回テーマ: TBC

2020/09/24

寺井 正 〔関西電力(株)〕

1. 負荷周波数制御について

電力系統において,周波数を一定に維持するためには,系統全体の電力供給と電力需要のバランスをとる必要がある。電力需要が電力供給を上回ると周波数は低下し,下回ると周波数は上昇する。

系統運用者は,時々刻々と変動する電力需要に見合うように発電量を制御し,需要と供給のバランスをとることによって周波数を維持している。このような制御が電力系統の負荷周波数制御である。

2. TBC について

複数の系統が連系されている電力系統では,他の系統で需要と供給のバランスが崩れた場合でも,連系線を経由して電力系統全体に影響する。

連系系統を構成する各系統の運用者間では,予め,連系線を通じた電力融通を計画調整しているが,個々の系統内で需要と供給のバランスが崩れると,周波数の基準値からのズレや連系線を流れる電力融通の計画値からのズレが生じることになる。

こうしたズレを解消するために,各系統運用者は,周波数の変化と連系線潮流の変化を同時に検出して自系統で発生した電力需要の変化を把握し,自系統の需要と供給のバランスを維持するよう発電量を制御する。

このように,連系系統において,自系統で発生した電力需要の変化については自系統内で処理することを基本とした制御方法が,TBC(Tie Line Load Frequency Bias Control,周波数バイアス連系線電力制御)である。

3. 国内における負荷周波数制御の状況

国内の電力系統は,東側が50Hz 系統,西側が60Hz 系統である。60Hz の連系系統を構成する電力会社(中部,北陸,関西,中国,四国,九州)は全てが,50Hz の連系系統では東北電力がTBC を採用している。東京電力および他の系統と交流連系していない電力会社(北海道,沖縄)はTBCではなく,周波数の変化のみを検出して制御する方式を採用している。

文献

(1) 電気学会編:電気工学ハンドブック
(2) 電気学会技術報告第302 号:電力系統の需給制御技術

【電気学会論文誌B,136巻,8号,2016に掲載】