用語解説 第66回テーマ: デマンドレスポンス(DR: Demand Responce)

2020/09/25

新井 裕 〔(株)明電舎〕

1. はじめに

DR とは,電力需要のピーク時や需給逼迫などの状況に応じて価格を変化することにより電気利用の変化を促す料金メニューである。2011 年東日本大震災後の全国的な節電の負担に対する反省から,DR への関心が高まってきている。2013 年2 月に取り纏められた電力システム改革専門委員会報告書では,東日本大震災後の節電においてDR はほとんど活用されていなかったとの認識が示されるとともに,DRなど需要側の工夫や分散電源が,需給を均衡させるための手段としてより期待されるようになったことが指摘された。

2. DR の種類

DR は,大きく分けて,(1)価格情報をもとに需要家が需要家側機器制御を行うPricing(料金誘導)型,(2)機器制御情報により外部から需要家機器制御を行うControl(直接負荷制御)型,(3)削減kW 量情報を元に需要家が需要家側機器制御を行うNegawatt†(ネガワット取引)型の3 つがある。

† Negawatt(ネガワット)は,節電量であり,電力量(ワット)の削減分(ネガティブ)を意味する。

(1) Pricing 型(料金誘導)

供給者が提供する価格情報を需要家に通知することで,DR を実現する方法である。この目的は,供給者が需要家へ適切な価格情報を提供することにより,料金面からの誘導を行うことである。

(2) Control 型(直接負荷制御)

供給者が需給状況を確認し,必要な削減kW 量を決定した後,供給者が需要家に直接負荷制御を指示することでDR を実現する方法である。この目的は,供給者が需要家へ直接負荷制御を実施することにより,設備面からの対応を直接行うことである。

(3) Negawatt 型(ネガワット取引)

削減電力量の売買をベースにしたDR 手法である。供給側と需要家側の間で,削減電力量と削減電力単価情報を通知しあい売買取引する。この目的は,供給者は,需給状況を確認し削減電力量を決定し,電力消費面からの対応を行うことである。

3. 今後の動向

今後,卸電力取引所の更なる活用や,現状の先渡市場,スポット市場,時間前市場に対して,先物市場,1 時間前市場・リアルタイム市場の創設に向けて,DR やネガワット取引の活用の具体的な議論が活発化することが想定される。

【電気学会論文誌B,136巻,9号,2016に掲載】