用語解説 第67回テーマ: 電圧安定性
2020/09/25
宮崎 保幸〔(株)東芝〕
1.はじめに
電力系統の電圧は,発電機,調相設備,電圧器タップなどの電圧・無効電力調整設備の制御で目標値に維持されている。電圧安定性とは,負荷の増加,発電機や変電設備の停止等のじょう乱時に,系統電圧を安定に維持する能力である。電圧安定性が低い場合は,じょう乱で系統電圧が大きく低下し,電力機器や発電ブラントの機能停止や,定態安定度の低下による発電機の脱調等で系統崩壊に進展する場合がある。
2.PV曲線と電圧安定性
図1に示す一機一負荷モデルで,負荷の有効電力Pと受電端電圧Vrとの関係は,図2に示すPV曲線で示される(1)。
図1 一機一負荷モデル
図2 PV曲線
負荷の有効電力P1に対して受電端電圧は高め解と呼ばれる曲線上側のV1と,低め解と呼ばれるV2の二つの値を取りえる。通常,高め解が安定,低め解が不安定で,曲線の先端が安定限界となる。系統の運転点は高め解a点である。ここで負荷の有効電力がP1からP2に急増し,送電端電圧Vsを上げる系統操作を実施したとすると,送電端電圧を上げた場合のPV曲線上のb点で系統電圧は維持される。系統操作をしない場合,または系統操作が遅れた場合は,安定に運転できる高め解から低め解に移行するため,系統電圧は低下し電圧崩壊に至る。運転点を高め解で維持するには,系統の特性を把握し,電圧や無効電力調整設備の制御を適正に実施することが必要である。
文献
(1)「電力系統安定運用技術」,電気協同研究,Vol.47, No.1 (1991)