用語解説 第68回テーマ: ライフサイクルアセスメント (LCA)

2020/09/25

村田 晃伸 (産業技術総合研究所)

1. はじめに

自動車の機能は人や物の輸送であり,発電所の機能は発電である。LCA とは,ある機能を果たすために必要となる製品やサービスなどの「製品システム」について,その原材料の抽出・取得から,使用後の廃棄処分に至る製品のライフサイクル全体を通して使用される物質,エネルギー等の量と,排出される環境負荷や廃棄物等の量を定量化し,環境に対する潜在的な影響を評価するための手法である。LCA の手法は,国際規格ISO14040 シリーズ及び日本工業規格JIS14040 シリーズにより標準化されている。

2. LCA 実施の流れ

LCA の実施手順を図1 に示す。第1 段階では,調査目標を定めて対象とする製品の機能を特定し,調査範囲としての製品システム(図2)を設定する。


図1 LCAの4段階


図2 製品システム

製品システムは製品のライフサイクルを構成するプロセスの集まりであり,相対評価ができるように製品の主要な性能(例えば発電所の耐用年数や年間発電量)が定量的に設定される。インベントリ分析と呼ばれる第2 段階では,システム境界を通して出入りする,製品,物質,エネルギー,環境負荷,廃棄物等のデータを収集し定量化する。影響評価と呼ばれる第3 段階では,インベントリ分析の結果を使って潜在的な環境影響を評価する。第4 段階の解釈では,インベントリ分析と影響評価で得た知見を結論と提言にまとめる。目標との整合性を保つべく,各段階を反復的に実施することもある。

 

文献

(1) JIS14040:「環境マネジメント−ライフサイクルアセスメント−原則及び枠組み」(2010)

【電気学会論文誌B,136巻,11号,2016に掲載】