用語解説 第74回テーマ: レドックスフロー電池

2020/09/28

柴田 俊和 〔住友電気工業(株)〕

1. はじめに

風力発電や太陽光発電が大量に電力系統に接続されると,周波数等の電力品質に影響を及ぼすことが懸念されている。これらの出力変動に対する新たな調整力として大形の定置形蓄電池が期待されている。レドックスフロー電池は,電池反応を行う流通形電解セルと,活物質循環系(貯蔵タンク,循環ポンプ,配管流路)により構成される蓄電池で,大形,長時間容量に適する。活物質(電解液)には,バナジウムの硫酸水溶液を用いたものが主流であるが,正負極に鉄/クロム,亜鉛/臭素等を用いたものも実用化されている。

2. 特 徴

レドックスフロー電池では出力(kW) 部と容量(kWh) 部が独立しているため用途に応じた適切な出力/容量設計が可能である。また,多量に使用する電解液は不燃性であることから火災リスクは極めて小さい。さらに,1 つのタンクから複数のセルに電解液が流れるため,各セルの充電状態が等しくなり,過充電を防止するためのセル単位での電圧監視が不要である。これらの理由から,レドックスフロー電池は大形化に適し,数10MWh 級の設備が実用化されている。

電池反応は,図1 に示すように,電解液中でのイオンの価数変化のみであり,充放電において溶解析出を伴わない。このため活物質の劣化がなく,充放電サイクル寿命が長く,不規則な充放電や深い放電でも寿命が阻害されない特長がある。また,電解液の電位差を測定することで,電池の充電状態(残量)を電気的に計測できる特長もある。


図1 レドックスフロー電池の原理

近年,各国において,バナジウム以外の新活物質の研究,開発が精力的に行われており,今後の低コスト化,高エネルギー密度化が期待される。

【電気学会論文誌B,137巻,5号,2017に掲載】