用語解説 第75回テーマ: ファラデー効果

2020/09/28

三木 恵 〔(一財)電力中央研究所〕

1. はじめに

磁性体中を直線偏光が通過した時に,光の進行方向と平行に磁界をくわえると磁界の強さに応じて偏光面が回転する(図1)。これは電磁誘導の法則で有名なマイケル・ファラデーによって1845 年に発見され,ファラデー効果と呼ばれている。又,偏光面の回転のことをファラデー回転という。


図1 ファラデー効果

このように物質を通じて磁界が光に影響を及ぼす効果は総称して磁気光学効果といわれ,ファラデー効果以外にも磁気カー効果など様々な磁気光学効果がある。

2. ファラデー効果の応用

ファラデー効果は以下の式で表されるように,偏光面が回転する角度θ [min] は通過する磁性体中の光路長L [m] と光の進行方向と平行な方向の磁界の強さH [A/m] に比例している([min] は角度の単位で1/60 度)。

θ =VHL

この比例定数V [min/A] はベルデ定数と言い,物質固有の値であり,石英で2.175×10-2,重フリントガラスで13.3×10-2 である。このようにファラデー効果は磁界の強さを偏光面の回転角で測定できることから,電流や磁界のセンサーに利用されている。特に光ファイバのガラスのファラデー効果を利用した全光ファイバCT は周辺の電気ノイズの影響を受けないセンサーとして電力や鉄道などの分野で開発が進められている。通信分野では光回路において光ファイバなどからの反射による戻り光を阻止する光アイソレータに使われている。

なお,ファラデー効果には逆ファラデー効果と呼ばれる逆効果があり,磁性体に円偏光の光を通過させると光の進行方向に実効的な磁界が誘起されることが報告されている。これは将来のコンピュータのための超高速デバイス等への応用が期待されている。

【電気学会論文誌B,137巻,6号,2017に掲載】