用語解説 第76回テーマ: 直流送電

2020/09/29

牧野 芳範 〔電源開発(株)〕

1. はじめに

直流送電(HVDC:High Voltage DC transmission)は,両端に交直変換設備を置き,長距離区間を架空線またはケーブル(および両者の組合せ)を用いて直流により送電を行うシステムのことを言う。広義では,送電線やケーブルを含まずに両端の変換器が同一構内に設置される周波数変換設備(FC:Frequency Converter)や非同期連系設備(BTB:Back To Back)も,交流→直流→交流の交直/直交変換を伴う点で共通するため,直流送電の部類に含まれる。

2. 交流送電との比較

交流送電と直流送電の比較例を表1 に示す。直流送電は,大規模電源の開発に伴う大容量・長距離送電,ループ潮流制御や安定度・短絡電流増大等の系統上の課題解決,非同期連系,周波数変換,海峡横断,離島送電,洋上風力からの電力送電等,幅広く適用が進んでいる。

表1 交流送電と直流送電の比較

一般に,直流送電では交流送電に比べ同一容量を送電する場合にケーブルや電線数が少なくてすみ,両端に変換所が追加となる点を差し引いても,海峡横断等でケーブル長が30~40km 以上となる場合や,架空送電線亘長が500km以上となる場合は交流よりも直流のほうが建設コストが安価となり有利になるとされる。

また,変換器方式は,サイリスタ素子を用いた他励式変換器(LCC:Line Commutated Converter)とIGBT 等の自己消弧型の素子を用いた自励式変換器(VSC:VoltageSourced Converter)に分類される。

 

【電気学会論文誌B,137巻,6号,2017に掲載】