用語解説 第78回テーマ: ディープラーニング

2020/09/29

佐野 常世 〔東京電力ホールディングス(株)〕

1. はじめに

ディープラーニング(深層学習)は,人間の脳にある神経細胞(ニューロン)のネットワークを模擬したモデルを用いて,入力データから特徴を数値化し答えを導くアルゴリズムであり,人工知能(AI)の分野で注目されている。ニューラルネットワークの原理が基本となっており,特徴量の重み付けを学習しながら変化させ,最適な値を出力するように調整していく。ニューラルネットワークは,特徴量の重み付けを伝達する隠れ層を多層構造にすることが難しいという課題があったが,近年のコンピュータ性能の飛躍的な向上と,大量なデータが簡単に入手できるようになったことで,隠れ層の多層化と複雑な学習計算が可能になった。これをディープラーニングという。

現在では,画像認識,音声認識,自然言語処理,ロボティクスなど多くの場面で活用事例が報告されている。今後も,顧客志向サービスや安全面の向上など様々な分野での応用が期待されている。

2. ディープラーニングの仕組み

ディープラーニングは,入力層,隠れ層,出力層の中に神経細胞を模倣したノードが配置され,それぞれをエッジで結ぶ構造となっている。


図1 ディープラーニングの構造

入力されたデータ(X1…Xn)は,各層が持つ関数とエッジが持つ重みにより計算した結果を次の層へ伝達し,最終的に出力層へ出力する。最終結果と正解値の差分を評価し,誤差を補正するように重み付けを変化させていく。これを何度も繰り返し,最終的には最適な値を出力するようなモデルを構築する。精度の高いモデルを作成するためには,学習用データの質と量が重要な要素となる。

【電気学会論文誌B,137巻,9号,2017に掲載】