用語解説 第80回テーマ: エコキュート

2020/09/29

高橋 広考 〔(株)日立製作所〕

1. はじめに

エコキュートはヒートポンプを利用した給湯システムである。熱交換器で空気の熱をCO2 冷媒に集め,その冷媒を圧縮機でさらに高温にしてお湯を沸かしタンクに貯める。2001 年に初めて製品化され,これまで累計500 万台以上が出荷されている(1)。なお「エコキュート」は関西電力(株)の登録商標である(第4575216 号)。

2. エコキュートの特徴

エコキュートの特徴は高い省エネ性能にある。ヒートポンプの導入により,投入した電気エネルギーの3 倍から7 倍の熱エネルギーを得られる。このことが従来型給湯器と比較して電気代や温室効果ガス排出量の削減につながる(2)。一般財団法人ヒートポンプ・蓄熱センターは,民生部門(家庭部門や業務部門)や産業部門のボイラ等をヒートポンプ機器で代替すると,2030 年度における温室効果ガス(CO2換算)削減効果が4830 万t-CO2/年(2012 年度比)になると試算している。この値は「日本の約束草案(3)」に示されている2030 年度のCO2 排出削減量のうち,ヒートポンプの導入対象業種である産業部門・業務部門・その他家庭用の削減目標合計の約22%に相当する(2)

3. デマンドレスポンスにおけるエコキュート

エコキュートは直接制御型デマンドレスポンス(DR :Demand Response)の制御機器としてしばしば活用される。居住者は,お湯を使うときに必要量がタンクにあれば良いので,それまでの間にDR でエコキュートが制御されたとしても,湯切れしない限り生活には直接影響しない。国内では,太陽光発電の余剰電力の発生予測に基づき,早朝深夜時間帯の湯沸しを抑制し,昼間時間帯に余剰電力を吸収するようエコキュートを稼動させる実証実験が行われた(4)

4. まとめ

エコキュートは電気代や温室効果ガス排出量の抑制だけでなく,電力系統のスマート化にも役立つ機器である。

文献

(1) 一般財団法人日本冷凍空調工学会:https://www.jraia.or.jp/index.html
(2) 一般財団法人ヒートポンプ・蓄熱センター:http://www.hptcj.or.jp/
(3) 地球温暖化対策推進本部:「日本の約束草案」,https://www.env.go.jp/press/files/jp/27581.pdf
(4) 富田泰志・小林 朗・鶴貝満男:「太陽光発電余剰電力吸収のためのヒートポンプ給湯機群制御方式の開発」,電学論C,Vol.133, No.8, pp.1607-1615 (2013)

【電気学会論文誌B,137巻,11号,2017に掲載】